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EVにAMラジオを搭載できなかった例も

ノイズを受けると、どのような実害が生じるのでしょうか。

野村氏 分かりやすいのは、カーラジオが聴けなくなるといった受信障害です。車載電子機器の動作時に出たノイズをクルマのアンテナが受信して、通信障害が起きるケースがあります。クルマの中は多数のワイヤハーネスが張り巡らされています。これらの長いワイヤは電波を発するアンテナ、つまりノイズ放射源になりやすいのです。そのノイズをラジオのアンテナが受信して障害を引き起こします。

 過去にドイツBMWの「i3」というEVで、発売までにAMラジオの受信障害対策を十分にできず、結局AMラジオを搭載せずに販売して話題になりました。

 エアコンやリモートキー、電動ドアなど、電子制御されている機器はノイズの影響で誤動作する危険性があります。ラジオなら「聴かない」という選択ができますが、エンジンやモーター、自動運転の関連機器となるとそうはいきません。エンジン制御で誤動作があれば事故につながります。

 通常、メーカーはEMC設計や対策を徹底し、クルマを設計・製造する段階でこうしたノイズによる障害が発生しないように対策を講じています。ですから利用者がEMC関連のトラブルを意識するケースはまずありません。一方で、設計者など製造側の責任と負担は重くなっています。自動車メーカーや部品メーカーにとっては、EMC設計と対策は、開発・設計上の最重要事項といえます。

ノイズの影響で機器が故障や誤動作する事例とは具体的にどのようなものでしょうか。

野村氏 ノイズによる発熱が引き起こす故障や、過電圧による故障など色々な事例があります。パワーエレクトロニクス機器を例にとると、パワー半導体のスイッチングで生じる過電圧によるパワー半導体自身の故障があります。

 スイッチングが起こると、本来出すべき電圧に加えて電流変化に起因する電圧がパワー半導体にかかりますが、その電圧がパワー半導体の耐圧値を超えると故障する恐れがあります。高速スイッチングによる電圧変化は高周波の成分を含むノイズ電圧源となるため、そのノイズが他の機器に干渉する危険性もあります。

 例えば、ノイズの影響でモーターなどの電子機器を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)が誤動作するケースが考えられます。自動運転機能を持つクルマでは、正常に運転できなくなる危険があります。

 EVやプラグインハイブリッド自動車(PHEV)といった、住宅などに設置した充電器で充電するタイプのクルマは、充電時に発生したノイズが充電ケーブルと充電器を介して住宅内に入ってしまうリスクもあります。そうすると、住宅の電源につながっている色々な機器が、ノイズによって誤動作する恐れがあります。

 実際にはEMC試験をパスした製品しか販売できないため、一般消費者がそういった問題を目の当たりにする機会はまずありません。しかし、メーカーの設計・開発担当者は、EMC試験をパスさせなくては製品を出荷できないから必死です。パスしてもトラブルが発生すれば、リコール問題に発展する場合もあります。