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原理原則を学んできちんとしたEMC設計を

EMC試験とは、実際に何を試験するのでしょうか。

野村氏 さまざまなものがありますが、例えば電波暗室で、試験対象の機器が発するノイズを計測したり、ノイズを与えて機器が誤動作しないかをチェックしたりします。一般的には国際機関や各国の団体などが定めた規格を基に試験を行いますが、場合によっては自動車メーカーが設けた独自の規格に対する試験が必要な場合もあります。

ノイズによるトラブルを防ぐには、どうすればいいのでしょうか。

野村氏 ノイズの出し過ぎによるトラブル(エミッション)を例に説明します。ひとまずノイズのレベルを規格値以下に抑えなくてはなりません。そのためには一般にノイズ対策を施す必要があります。対策を打つ際には、現在生じているノイズのメカニズムに応じた対策を打たないと意味がありません。この点が重要です。頭痛に胃薬は効きません。同様に、さまざまなノイズ対策部品にも適切な使いどころがあり、むやみに追加すればいいわけではないのです。

 ただし、製品設計後の対策は、選択肢も限られていますし、コストも高くなりがちです。より望ましいのはノイズ対策ではなく、ノイズ設計を行うことです。この点はとても重要で、設計段階からノイズ品質を作り込めば、比較的低いコストで無理のないノイズ規格適合を実現できます。

 そのためにはノウハウを積み上げる必要があります。ノイズ対策を行った際、なんとなく効いたからそれで終わりにするのではなく、ノイズが発生するメカニズムの把握が重要でしょう。社内でノウハウが十分に獲得できていない場合には、類似の事例を文献や技術書で探したり、有識者に教えてもらったりするのも手だと思います。

 基本的な原理原則を押さえておくのも重要です。個別の事象は多岐にわたり複雑ですが、基本的には「ノイズ源」「伝搬経路」「放射箇所」の3つの要因の掛け算で、ノイズのレベルは決まります。このうちどの箇所が支配的な要因で、抑制可能なのかを見極めるのが重要です。

どんな点に配慮すべきでしょうか。

野村氏 パワーエレクトロニクス機器の場合、主要なノイズ源はパワー半導体です。その周囲でのノイズの閉じ込めが基本的な設計思想になります。「閉じ込める」というのは、伝搬経路をうまく設計して、ノイズの流れをコントロールすることです。ノイズは高周波ですので、低周波の電力とは全く異なる伝わり方をします。ですから、基板のちょっとした導体パターンの引き回しや、バイパスコンデンサーの実装方法で、ノイズは大きく変わります。

 パワーエレクトロニクス技術や情報技術の進化による電動化・自動運転のさらなる広がりは、ノイズ源や被害者となる電子機器が増えることを意味しており、それに伴って必然的にEMCの重要性がますます高まります。そのような状況で、ノイズによるトラブルを防ぐために重要なのは、EMC対策ではなくEMC設計の意識です。そのためには基本的な原理原則をきちんと学んでおくことが大切です。

野村 勝也(のむら・かつや)
関西学院大学 工学部 専任講師
2010年京都大学大学院電気工学専攻修士課程修了。同年、豊田中央研究所入社。主に電力変換回路におけるEMC設計技術に関する研究、パワーエレクトロニクス分野への構造最適化法の応用に関する研究に従事。2017年から大阪大学大学院機械工学専攻 博士後期課程に入学、2019年同課程修了。2021年から関西学院大学専任講師。博士(工学)。