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自動車を設計・製造するうえで重要になるのがEMC対策と設計だ。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の普及、電子制御ユニット(ECU)の高度化などによって、自動車部品や車載機器から出るノイズへの対策が難しくなっている。ノイズはどのような問題を引き起こすのか。どのような対策があるのか。なぜEMC設計が重要なのか。「日経クロステックラーニング」で「自動車におけるEMC対策・設計の基礎と実践」の講座を持つ関西学院大学工学部専任講師の野村勝也氏に聞いた。(聞き手は高市清治、安蔵靖志=IT・家電ジャーナリスト)

関西学院大学工学部専任講師の野村勝也氏
関西学院大学工学部専任講師の野村勝也氏
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EMC(ElectroMagnetic Compatibility)とは何でしょうか。

野村氏 EMCは日本語では「電磁両立性」と言います。何を両立するかというと、まずは機器が無線通信を妨害するノイズ源にならないこと。そして、外部からノイズを受けても機器が正常に動作することです。いわばノイズの観点で攻撃力が低く、防御力が高いという2つの状態の両立です。

 電波を使って情報をやり取りするのが無線通信です。通信のために必要なある範囲の周波数の電波はそのまま通す。不要な電波は抑制するか出ないようにする。これが正常に通信するためのセオリーです。通信に使う電波にノイズによる電波が干渉すると受信障害を引き起こします。

 さらに、ノイズの影響で電子機器が誤動作したり、最悪の場合は故障したりするケースもあります。最近、特に注目されているのが自動車におけるノイズ設計、つまりEMC設計です。

なぜ今、自動車のEMC設計の重要性が高まっているのでしょうか。

野村氏 車載電子機器から出るノイズのレベルが大きくなっているからです。

 周知の通り、今や自動車には多数の電子機器が搭載されています。カーナビゲーションやラジオといった目に見えるところ以外にも、エンジンやパワーウインドーの制御などに多数の電子機器が使われています。電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)はモーターやインバーターを搭載しています。今後、自動運転が進めばLiDAR(レーザーレーダー)などのセンサー類も積まれます。

 これらの電子機器は皆、ノイズ源になり得ると同時に、ノイズの影響による誤動作や故障の危険性があります。運転中の誤動作は、生命・身体を危険にさらす事故に直結します。搭載している電子機器がノイズの影響で誤動作や故障をしないと同時に、ノイズ源にもならない必要があるのです。

 電動化や自動運転が今後ますます普及する状況を考えると、今後、クルマに搭載される電子機器が増えこそすれ減ることは考えられません。そのため、EMC設計の重要性が高まっているのです。

 例えば、EVやHEVには、交流モーターを動かすために、バッテリーから供給される直流電流を交流に変換するインバーターが搭載されています。ハイブリッドシステムには、電圧を上げて電流量を抑え、モーターを小型化するために昇圧コンバーターを搭載しているものもあります。

 これらのインバーターやコンバーターのようなパワーエレクトロニクス機器に搭載される「パワー半導体」は年々性能が向上し、高速かつ高周波で動作するようになってきました。しかしこのような高速化および高周波化は、電子機器の小型化や高効率化に寄与する一方で、ノイズ発生量の増加をもたらします。加えて、電子機器が小型化するとノイズ経路がさらに複雑になります。そのため、より高度なノイズ設計が必要になっているのです。