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 パワーデバイスを用いた電力変換回路の信頼性向上を実現する、電気特性と熱特性の同時解析が可能な回路シミュレーションモデルについて、本コラムでこれまで2回にわたって紹介してきた(図1)。

 このモデルを用いて、任意のデバイスの特性を表現できるようにするためには、モデルのパラメーターをデバイスに合わせる必要がある。具体的には、次の2つの手順が必要となる。

  • (1)温度を考慮した電気特性モデルパラメーターの推定
  • (2)熱特性モデルパラメーターの推定
図1 電気特性モデルと熱特性モデル
図1 電気特性モデルと熱特性モデル
(出所:奈良先端科学技術大学院大学)
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 まず、電気特性モデルで使用されるパラメーターを確定する。電気特性モデルは、その特性を正確に再現するために幾つかのパラメーターで構成されている。我々の電気特性モデルの場合、フラットバンド電圧、寄生抵抗成分、移動度などがある。電気特性モデルを用いることで、電流の特性を計算することができるが、電流が多く流れるデバイスもあれば、電流量が少ないデバイスもある。そこで、モデル化の対象となるデバイスの実測結果をよく再現するようにパラメーターを最適化し、抽出する必要がある。この工程をパラメーター抽出と呼ぶ。

 電気特性のパラメーター抽出は、実測値とモデル値の誤差を最小化する最適化問題として定式化されている。我々の研究グループでは、ニューラルネットワークのパラメーター学習における「誤差逆伝播法」を応用したフレームワークを提案している。

 電気特性モデルは、複数の非線形式から構成される。例えば、CMOSトランジスタで古くから使用されているα乗則による電流モデルは、図2のような有向非巡回グラフで図示できる。各頂点は四則演算をはじめとした対数、指数などの演算を表し、各辺は計算途中の変数を表す。図2の上側がグラフの入力、すなわちモデルパラメーターおよびバイアス電圧であり、下側が電流モデルの結果である。電流モデルの結果(Isim)と実測値(Imeas)の差(Error)を最小化するためにモデルパラメーターを最適化することは、ニューラルネットワークにおける重み、バイアスなどのパラメーター値を学習する過程と同様である。

 我々が提案する手法により、誤差逆伝播法を図2のグラフに適用することで、高速かつ正確なパラメーター抽出が可能となった。また、パラメーター最適化問題において、適切な初期値の決定は収束に関わる重要なステップである。電気特性モデルについて、実測からパラメーターの概算値を求める手順を併せて提案している。

図2 電流モデルのグラフ化
図2 電流モデルのグラフ化
(出所:奈良先端科学技術大学院大学)
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 図3は、温度ごとに実測とシミュレーションをフィッティングした結果である。上述のフラットバンド電圧、移動度などのパラメーターは、温度に対して1次の依存性を持つことが知られているため、パラメーターを温度の1次関数とみなして抽出をしている。このように、モデルパラメーターに温度依存性を持たせることで、図3のように任意の温度における電流値を計算することができる。

図3 温度ごとの電流特性とそのモデル。点が電流の実測値で、線がシミュレーションによる計算結果を表す。
図3 温度ごとの電流特性とそのモデル。点が電流の実測値で、線がシミュレーションによる計算結果を表す。
(出所:奈良先端科学技術大学院大学)
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