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信頼性の新たな動向(第16回):アダプティブテストと機械学習

 アダプティブテストの実現には、ウエハー製造やテストの数多くの工程を通して、着目するウエハーロット、ウエハー、あるいはダイの特徴を総合的に見極めることが望ましい。しかし、膨大なデータの個々の関連や特徴を分析するのは手作業では困難で、機械学習の活躍が期待される。機械学習については近年、最先端のライブラリーが利用できる開発環境が整備され、初心者でもさまざまな手法が試せるようになってきた。そのため半導体のテストに機械学習を適用した多数の論文が発表されている。

 一般に、機械学習を効果的に用いるには、扱うデータがどのような性質のものかよく理解していることと、機械学習の手法と数々のパラメーターの深い理解が重要とされている。前者は、テスト内容の正確な理解と、故障解析による物理的原因の特定やソフトウエア故障診断による不良原因の理解が必要で、半導体テスト技術者や品質保証部門の専門家の領域だが、おそらく機械学習技術に堪能な人は少ないだろう。後者は機械学習の専門家の領域だが、半導体テストの内容や現場の情報には疎い人もいる。そこで現場と研究者が密接に情報や意見を交換しあってアダプティブテストの実現を進める必要があると思われる。

 半導体のテスト結果データには多数のノイズが混在している。計測した特性値は製造ばらつきに加え、テスタ装置や同一装置内でのサイトの違い(同時測定テストなどでは、各ダイの配置位置により用いられるプローブ針が異なり、計測値のずれが生じている)によってもばらつく。これらをそのまま機械学習のソフトに入力すると分析精度の低下につながる。筆者がずいぶん昔に手作業で分析していて、ある時点からデータの傾向が大きく変わったので不審に思い測定現場に出かけて問い合わせたら、実はその時点から測定ビン(テスト結果の分類番号)が変わっていたというようなこともあった。また測定値の絶対値や分布は、テスト項目ごとに大きく異なるので、なんらかのデータの標準化も必要である。これらの課題に対処した後に、視覚化や解析的な手法(回帰分析、主成分分析、クラスタリング、サポートベクタマシンなど)でデータそのものの特徴を把握することとなる。

 最近盛んなディープラーニング(深層学習)のモデル開発などはこのあとの作業と考えられる。多層パーセプトロンによるニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network: CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN)などさまざまな手法への適用が考えられる。不良のダイはウエハー上の配置で周りのダイの特性と無関係ではないと思われるので、筆者は、周りのデータとの関係も認識できるCNNやRNNのような手法が有効ではないかと推察する。近い将来、機械学習がテスト内容やテストフローを主体的に決定できるようになるのを期待したい。

(執筆:九州工業大学 佐藤康夫)