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 触媒は、物質と物質の化学反応において、物質同士の化学反応速度を変化させる物質です。でも、触媒という物質そのものは変化しません。

 触媒の代表的な物質として、白金やその化合物などが知られています。自動車の排出ガスの浄化に触媒が果たす役割は大きく、排気管(マフラー)に内蔵されたDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)にも触媒(白金)が担持されています。その触媒作用で有害物質を分解します。このように触媒は、物質と物質の化学反応や化合、あるいは変質などさまざまな変化や進化を促進する作用があります。

 実はこのような触媒の作用、物質の世界だけではなく人間関係やイノベーションの世界にも必要なのです。

触媒で人間関係が良くなる?

 「人間関係と触媒?」――初めて聞く人はびっくりするでしょう。しかし人間関係にこそ、触媒的な人材が欠かせません。人間関係というのは難しく、そもそも人嫌いという人もいますし、誰ともすぐに仲良くできる人もいます。また、その度が過ぎて濃厚接触で心配になることもあります。

 この人間関係をよく見ておりますと、良好な人間関係があるところには、少なからず触媒的な人材がいることに気付きます。本人は何も変わらないのですが、周りの人たちがこの人の触媒作用によってよく話すようになったり、お互いのノウハウを持ち寄ったりして元気になることがあるのです。

 昔のお座敷遊びには「幇間(ほうかん)」と呼ばれる人がいたそうです。幇間は「太鼓持ち」とも言われます。主催者や客の機嫌をとって、芸者や舞妓(まいこ)が技芸を発揮しやすい環境をつくり、その場を盛り上げる人のことです。たまに自ら芸を見せることもありますが、基本的には盛り上げ役に徹して、決して自分が主役にはなりません。周りの人をヨイショする、いわば脇役です。お酒の席では酔った客が騒ぐこともあります。客と芸者・舞妓の両方を取り持つのは、非常に大切な役割と言えましょう。

太鼓持ちの操り人形
太鼓持ちの操り人形
(出所:PIXTA)
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 翻って、人間関係の良い職場の例を見てみましょう。お互いに口もきかない人と人の間に入り、それぞれの良いところをうまく導き出して、相互に認識させる触媒的な人がいるのです。そうして、その人たちも気付かなかった相乗効果を生み、一気に仕事が進むわけです。