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日経Automotiveのメカニズム基礎解説「第23回:エンジンの気筒休止機構」の転載記事となります。

 気筒休止の仕組みは、構造により3種類に分類できる(表)。V型エンジンの片側のバンクを一斉に休止させる「片バンク休止型」と、特定のシリンダーを休止させる「気筒選択型」、3気筒エンジンなどで順番に気筒休止を繰り返す「循環休止型」がある。

表 気筒休止の主な方法
表 気筒休止の主な方法
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 片バンク休止型は最も歴史が古く、米GM社がV型8気筒エンジンで初めて採用した。8気筒のうち4気筒を休止させて、最大30%燃費を改善させたという(図2)。実燃費では走行条件により効果が左右されるが、高速巡航が多いほど燃費向上に貢献するのは間違いない。

図2 GM社のAFM(アクティブ・フューエル・マネージメント)
図2 GM社のAFM(アクティブ・フューエル・マネージメント)
V型8気筒やV型6気筒のエンジンに搭載されているシステム。エンジンのカムシャフトの動きをプッシュロッドへと伝えるリフターでカムの動きを休止する。リフター上部にあるスプリングは、油圧停止時にプッシュロッドが遊ばないようにするためのサポート。油圧の制御は上部に配置したソレノイドバルブをまとめたコントロールユニットで行う。
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 一般的には、ロッカーアームを駆動する油圧リフターへの油圧供給を停止させ、バルブを全閉状態にすることで実現する。

 バルブ開閉を継続していると燃焼室内の吸排気によるポンピングロスが発生するが、バルブを閉じたままにしておけば、圧縮工程では抵抗になるものの膨張行程では圧縮に要したエネルギーの大部分を回収できる。摩擦による損失は避けられないが、駆動損失は前述の通り稼働気筒のポンピングロス軽減に役立つものでもある。

 高速巡航時に燃費を改善させるだけでなく、大排気量で多気筒のエンジンでは再始動時の燃料消費やタイムラグが大きいことから、アイドリングストップ機構の代わりに気筒休止を採用するケースもある。かつてトヨタ自動車が販売した「レクサスLFA」のV型10気筒エンジンにも、アイドリング時に片バンクを休止させる機構を採用していた。

 ピットロードの速度制限など規則を利用し、スピードリミッターを作動させている間は片バンクの燃料をカットするレーシングカーも存在する。この場合はバルブが駆動し続けるため駆動損失は大きくなるが、それでも稼働気筒の負荷増大もあり燃費低減を図れる。

 ターボチャージャーを搭載したレーシングエンジンでは、コーナー出口での加速時にタービンの立ち上がりを高めるために気筒休止を活用する技術もある。コーナリング時にもスロットル開度を維持し、エンジン回転数を高く保ったままトルクを低減させるのが狙いだ。