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ジェムコ日本経営 本部長コンサルタントの古谷 賢一氏
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ジェムコ日本経営 本部長コンサルタントの古谷 賢一氏

 総じて強いと言われてきた日本メーカーの工場。ところが、その力を落としつつある工場が目に付くようになったと、ジェムコ日本経営 本部長コンサルタントの古谷 賢一氏は指摘する。工場力の低下を止め、再強化に導く鍵を握るのは工場マネージャーだ。日経 xTECHラーニングの「世界で戦える工場マネージャー養成講座」で講師を務める同氏に、工場力の再強化のポイントを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

一連の品質不正、すなわち完成車検査の不正と品質データ偽装の問題が一向に収束しません。新たな不正も発覚。トップの辞任に至る大きな問題となっています。この問題をどう見ますか。

古谷氏:明かな違法行為などの不正は別として、品質不正として挙げられる問題の一部は、どこまでが不正でどこまでが許されるかという微妙な内容を含んだ難しい問題です。例えば、簡便法で検査したり換算値を使ったりすることは、業界によってはちょっと前まで珍しくありませんでした。実は、昔からの慣例として今でも使っている工場はある可能性があります。顧客からクレームがあるわけでもなく何がまずいのかと思っていたり、そもそも間違っていることに気付いていなかったりするケースもあることでしょう。

 正論を言えば、顧客と仕様書を結び直せばよいということになります。最終的には全てをがちがちに決めて、それに従わないと「黒」と判定されてしまいます。工場としてはこれはきつい面があるでしょう。私もかつて工場マネージャーとして働いていたので、気の毒に感じるところはあります。しかし、昔は緩かったコンプライアンス(法令順守)が厳しくなっている現在、押さえるべきところはしっかりと押さえなければなりません。

どのように対応すべきでしょうか。

古谷氏:品質不正を防ぐために工場マネージャーが押さえるべき管理上のテクニックはもちろんありますが、ここではもっと根本的な条件を挙げましょう。それは「言行不一致」を避けることです(関連記事)。

 工場マネージャーが「コンプライアンスを重視しなさい」と言った時に、現場の人間がそれを守れるような状況や環境づくりをきちんと行っているでしょうか。口では「品質第一!」と言いながら、品質問題が起きたときに「でも、納期は死守せよ」と口走ってしまうと、現場は混乱してしまいます。「丁寧に進めなさい」と言いながら、「今すぐにでも出荷しなさい」と指示したらどうなるでしょうか。両立させることは無理なので、現場は問題がより大きくなり得る納期を取ることでしょう。

 コンプライアンスを守れというのに対し、そのままでは守れない事態や状況に陥った場合に、現場の人間に判断を押し付けてはいけません。工場マネージャーが判断して指示すべきです。現場は日々の出荷という目先のことしか考える余裕がありませんから、コンプライアンスを守れない状態で日々の出荷を続けていれば結果的に不正になってしまいます。一連の品質不正問題の多くは、現場に悪気があったわけではないと思います。やるべきことをきちんとできる環境にあれば、現場が不正に走ることはありません。

管理上のテクニックにはどのようなものがありますか。

古谷氏:最もシンプルで効果があるのは「見える化」です。多くの人が実態を目で見て分かるようにしておけば、不正を働こうとする人をけん制することができます。見える化された状態で不正を働こうとすれば面倒な隠蔽工作が必要となるので、不正の抑止効果となります。現在は品質不正が社会問題化しているので、「おかしい」と気付いたり指摘したりしやすい状況にあると言えます。従って、見える化の効力はより大きいはずです。