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品質不具合を繰り返す企業の共通点

なぜ、そうした事態に陥っているのでしょうか。

皆川氏:品質不具合に関する未然防止(以下、未然防止)計画がない、もしくは実行していないからです。件(くだん)の大手企業は未然防止計画を持っていませんでした。新聞に載るほどの品質トラブルを起こした企業や、品質不正問題が発覚した企業にも、未然防止計画がないことは容易に想像できます。持っていたらそれほど大きなトラブルにはならないし、問題が長期にわたって放置されることもないからです。

 品質不具合を繰り返す企業には共通点があります。それは、「直接原因」しか見ていないことです。品質不具合の発生と対策のパターンは大体決まっています。

(1)品質問題が発生する
(2)関連部署が大騒ぎする
(3)慌てて原因を調べる
(4)直接原因を見付ける
(5)対策を施す
(6)安堵して終了

 ここで直接原因とは、品質不具合の表層的な原因のことです。その品質不具合を生み出した根本的な原因、トヨタグループで言うところの「真因」の追究までには至りません。そのため、対策といっても、その場しのぎの「対症療法」的な対策にとどまります。にもかかわらず、トラブルをうまく押さえ込んだと安堵して終わり。再発防止のための活動も、未然防止に向けた取り組みも見られません。

品質不具合を繰り返す企業の共通点
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品質不具合を繰り返す企業の共通点
品質不具合の対策を施すも、対症療法のため、また別の品質不具合を繰り返す。(作成:日経 xTECH)

 どんなに頑張って直接原因の対策の手を打っても、品質不具合の再発防止にはほとんど効果はありません。真因の対策を施していない以上、それが引き起こす別の品質不具合が発生する可能性が高いからです。しかし、先のパターンに従い、新たに発生した品質不具合でも同じく対症療法的な対策を施し、安堵して終わり。結果、品質不具合の発生が繰り返されるというわけです。これでは「モグラたたき」をやっているようなものです。

では、トヨタグループでは品質不具合についてどのように対応しているのでしょうか。

皆川氏:トヨタグループでは、品質不具合は未然に防ぐというのが基本的な考えです。そして、未然防止のために品質手法を使いこなしています。具体的には次の4種類です。

[1]品質機能展開(QFD)
[2]DRBFM〔設計FMEA(故障モード影響解析)〕
[3]工程FMEA
[4]QAネットワーク

 トヨタグループでは、こう言われています。

「QFDを実施せずに、設計の目標値を決めたとは言えない」
「DRBFMを実施せずに、設計したとは言えない」
「工程FMEAを実施せずに、工程設計したとは言えない」
「QAネットワークを実施せずに、生産ラインを造ったとは言えない」

トヨタグループの「4大未然防止手法」
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トヨタグループの「4大未然防止手法」
(作成:日経 xTECH)

 鋭い人ならこれらの表現を見て気付くと思います。そう、構想設計から詳細設計、工程設計、量産工程(生産ライン)に至る幅広い工程を見渡して、品質不具合に対する未然防止の鍵をかけるのが、トヨタグループの考えです。いわば4重のブロック。従って、例えば生産ラインのある1箇所で不具合が発生して対症療法で済ますといった方法は、トヨタグループでは対策とは呼ばないということがよく分かると思います。