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知らない人が多い

未然防止計画とその実践は日本企業、とりわけ高品質を謳(うた)ってきた日本の製造業にとって基本だったのではないでしょうか。それが、どうして未然防止の取り組みどころか、再発防止の活動も不十分なのでしょうか。

皆川氏:実は、私も当初は不思議に感じていました。しかし、企業を指導するようになって分かったのは、「知らない人」が実に多いことです。多くの人が、未然防止の大切さや必要性に気付いていないのです。ひどい場合は、「品質不具合が発生したらすぐに手を打ち、できる限りトラブルの影響が小さいうちに押さえ込むことが品質対策だ」と言う人さえいました。これでは先述の通り対症療法に過ぎませんから、未然防止の対策にはなり得ません。

 こうした状態では、世の中には品質不具合を未然に防ぐための品質手法があり、それを現場で使いこなすという発想すら出てこないと思います。

品質完璧マスターシリーズの会場の様子
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品質完璧マスターシリーズの会場の様子
真剣なまなざしの受講者が集う。(写真:日経 xTECH)

未然防止のために4種類の品質手法を使いこなすことを、なぜ知らない日本企業があるのでしょうか。

皆川氏:知らなくても、とりあえず製品が出来るからでしょう。寸法と材料程度を聞けば、何とか形になる。品質不具合が出れば、モグラたたき。「ああ、材料を変えなくちゃ」と言って、ある工程を直す。次は「溶接の電流を変えよう」、その次は「面粗度を上げないと」と、そのつど工程に修正を加えていく。しかし、次から次に顔を出すモグラ(品質不具合)を退治することはできません。その結果が500件/月の客先トラブルなのです。

 もしもトヨタグループでこんなことをしていたら、「君はこんなことも知らないのか」とマネージャーやリーダーなどから厳しく叱られることでしょう。しかし、実際にはそんなことは起きないと思います。なぜなら、しっかりと教育しているからです。

 基本的に、トヨタグループでは社員全員が品質について教育を受けています。ところが、多くの企業は全社員ではなく、一部の社員だけ、例えば自ら学ぼうと手を挙げた人だけに学ばせるケースが少なくありません。これでは一部の優秀な人は未然防止の重要性を理解できますが、他の人はできません。先の通り、品質不具合を未然に防ぐには設計から生産までをにらんだ4大未然防止手法の展開が必須です。しかし、教育を受けた人が少ない企業の場合は、果たしてそこまで幅広く社内で展開できるかどうか…。権限を持つ優秀なリーダーの手腕次第ということになってしまうかもしれません。