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現地に合わせてワイパーを1本に

そこで製品開発のフローを改めた。

竹村氏:いきなりそこに到達したわけではありません。最初に気付いたのは日本国内では当たり前だった「最高品質に合わせる」ではなく、「現地で求めれる品質に合わせる」という考え方への修正でした。きっかけはインド市場での経験です。

 同時期に著しい経済成長を遂げていたインド市場では、自動車メーカーのタタ・モーターズが日本円で20万円程度の大衆車を中間層に普及させようと計画していました。デンソーはインドに製造拠点があったので、タタ・モーターズから声がかかったのです。引き合いがあったのはワイパーでした。

 ワイパーの価格を下げるといっても限界があります。そもそも低コストの部品ですから「下げ代」が非常に小さい。日本国内にある本社の設計者が悩んでいる間に、インドで採用したインド人開発者が、「2本あるワイパーを1本に減らしてはどうか」と提案しました。

 インドでは雨が降るのはほとんど雨季に限られます。年間を通した降雨量も少ないし、降る時間も日本のように長くはありません。ワイパーが1本あれば、フロントガラスに降りかかる雨を拭き取って運転するために十分な視界を確保するのに、インドでは事足りるのではないか。その開発者はこう考えたのです。結果、この案がタタ・モーターズに採用されました。

 この時、「現地最適」というごく当たり前のことに気付いたのです。現地の気候や風土はもちろん、クルマの使い方に合わせて発想すれば、その市場ならではの低コスト化を進められる。あくまでワイパーの低コスト化ではありましたが、インド市場で得たこの教訓があったからこそ、中国市場での大幅な低コスト化を実現できたと言えます。