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設備にも中国製を導入

具体的にはどのような手順で何を行ったのでしょうか。

竹村氏:まず営業を中心にターゲットとなる顧客を絞り込みました。狙いは、中国の地場カーメーカーへの新規拡販です。どんな製品を造っても、最終的にはクルマに組み込まないと意味がありません。だからカーメーカーと連携する必要があります。

 それから仕入れ先の開拓です。材料、部品のサンプルを徹底的に集めて評価しました。20人以上のバイヤーが1年以上、中国中を駆けずり回っていました。

 その上で製品の造り方を検討しました。材料、部品を受け入れる際のばらつきの許容範囲を認めたのと、中国製設備の導入という大きく2つです。

 例えば、電子部品のばらつきについて許容範囲を広げました。電子部品はどうしてもばらつきがあります。このばらつきをどの程度、認めるか。その許容範囲を決めるのは、低コスト化を進める上で重要なポイントでした。例えば汎用素子類です。従来は厳しい許容範囲で買っていたので高くついていました。ところが、クルマのメーターに組み込むダイオード、トランジスタなどの汎用素子について、調達ルートの見直しと併せてばらつきの許容範囲を広げたところ、従来に比べて3割以上安い価格で買えるようになりました。

 検証してみるとばらつきの許容範囲を広げても、その素子を組み込んだメーターの不具合の発生確率はそれほど大きく変わらないと判明しました。それまでは誰もこうした検証を実施していなかったのです。

 それから材料の検査設備も安価なものを導入しました。というのも、材料のばらつきが少ない日本製ならそのままラインに投入できても、ばらつきが大きい中国製はそのままでは使えず検査が必要になるからです。

 超音波探傷試験や画像検査だと設備に700万円程度かかりますが、表面に流した渦電流の変化で傷の有無を調べる渦流探傷の簡易試験設備にして20万円程度に抑えました。

 それまで日本から持ってきていた切削機やダイカストなどの設備も中国で調達しました。日本のように大型の設備ではなく、小型の単能機の設備を組み合わせるなど造り方の最適化を検討しました。

 ほんのすこし仕立て直せば、十分に使える安価な中国製の設備も結構あります。例えば、中国製の射出成形機を購入して、先端に取り付けるノズルだけを日本製の品質の高いものに交換するようなケースもありました。ノズルには耐久性も欲しいし、ノズルの精度が低いと射出成形品の品質にばらつきが生じてしまうからです。

 全てデンソー本社で内製していた金型も、型を構成する部品の重要度に応じて層別し、中国の型メーカーに発注しました。例えば、機密性が高い重要な部分は内製し、製品の品質に大きな影響を与える構造部品は日系の協力会社に発注し、一般部品は中国地場の型メーカーに外注しました。冷蔵庫に使われている樹脂製品の金型を作っている中国企業に、金型の一般部品を外注したこともあります。金型の製造費は半分以下に下げられました。

 このように「ボトムレベル」を探りながら、現地の状況に合わせた機能・品質の適正化を図っていく。この意識改革によって、コストの40%削減を実現したのです。その後数年にわたって、多くのコンペに参加し、半分程度は受注できるようなコスト競争力を持つことができました。

 こうした手法をそのまま日本国内に移植することはできません。日本の自動車業界が要求する品質レベルは格段に高いからです。しかし、ボトムレベルをベンチマークとして設計の検討フローを見直したり、電子部品のばらつきの許容範囲を認めたりする、製品開発のフローを見直す意識や考え方は国内でも応用できるはずです。国際競争が激化する中で、大幅な低コスト化を進めるには、こうした変革ともいえる発想の転換が必要なのは間違いないでしょう。

竹村 孝宏
イントランスHRMソリューションズ代表取締役社長(元デンソー)
奈良県生まれ。中小企業診断士、キャリアコンサルタント。大阪市立大学商学部卒業、オーストラリア・ボンド大学大学院経営学修士課程修了(MBA)。1982年日本電装(現デンソー)に入社。中国での事業経験を経て、全社プロジェクトリーダーとして活躍。「新興国向低コストプロジェクト活動」での成果が評価されて「社長賞」を受賞。現在は人材育成事業に取り組み、豊富なノウハウを体系化した能力開発トレーニングや営業力強化指導に当たっている。