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電子化して読みやすくする

「過去トラ」「故障のメカニズム」「設計ノウハウ」をまとめた冊子を作れば解決しますか。

本田氏:紙の冊子ではなく、電子化が必須だと考えています。せっかく情報を収集してまとめても、設計者は忙しいから調べやすく、読みやすくしないと人は利用しません。FMEA辞書という道具を作っただけでは、品質の不具合をなくせません。電子化して全社のグループウエア上で共有するといった工夫が求められます。

 その際、「ベテラン社員用」と「中堅社員用」、「新入社員用」など仕事の習熟度に合わせたFMEA辞書を作ると良いでしょう。ベテラン向けは文字だけの解説でも構いません。しかし、新入社員向けはそうはいきません。写真や図版を多用し、用語解説も加えたい。「イオンマイグレーション」「鋭敏化」といったキーワードにリンクを貼って、クリックすると用語解説が表示されるようにしてもいいでしょう。できればA4用紙1枚程度のボリュームにして見やすくする。

電子化した利用しやすいFMEA辞書さえあれば鬼に金棒ですね。

本田氏:もちろん道具を作って終わりではありません。利用を促す仕組みが必要です。例えば、試作図を作成する際にFMEA辞書などを使って不具合が生じかねないポイントを確認したか否かを確認するチェックシートを設けたり、そのチェックシートの提出を努力義務化したりする業務フローも必要です。

 先述した通り、設計者個人が図面をチェックするだけでは不十分です。設計者個人では見つけられなかった問題を発見するのには、設計や製造、品質保証、材料・技術の専門家などから成るチームでのDR実施です。

 DRをおざなりにしている例も見受けられます。チームでDRを開いても、設計者が1人で喋って終了するのでは意味がありません。DRを円滑に進められる司会者の育成も必要です。DR司会者の注意事項集や有効な質問集などを作成しておくと良いでしょう。

 重要なのはあくまで不具合をなくすことです。不具合をなくすためにFMEA辞書を使って設計図をチェックしたり、DRで設計図の問題を見つけ出して解決したりするのです。FMEAはあくまでツールであり、実効性を高めて不具合をなくすには、こうした運用上のルール作りも必要です。

本田陽広(ほんだ・あきひろ)氏
ワールドテック講師、元デンソー
1975年に日本電装(現デンソー)に入社。ディーゼル機関用噴射ポンプの開発・量産化に従事する。1990年にガソリン噴射事業部に配属。ガソリンエンジン用の噴射ポンプや電子スロットルなどの開発に携わる。2000年には機能品事業部へと転属し、品質リーダーとして設計業務改善に取り組む。2015年3月にデンソー退社。現在はワールドテックで講師として活動中。著書に、JSQC選書「FMEA辞書」(日本規格協会)と「未然防止のための過去トラの作り方・使い方」(日科技連出版社)がある。