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生産技術部門だけでは議論できない

工程FMEAが形骸化するもう1つの原因、すなわち生産技術部門だけで工程FMEAを行うと、何が問題なのでしょうか。

皆川氏:工程FMEAは、ワークシートの枠を埋めることが目的ではありません。目的は、あくまでも不具合の発生を未然に防ぐこと。従って、最も大切なのは潜在的な不具合に気付くことです。気付くことさえできれば、後はきちんと対処しさえすればよいのですから。

トヨタグループで工程FMEAに参加する5つの部門
トヨタグループで工程FMEAに参加する5つの部門
生産技術部門を中心に、設計部門と製造部門、品質保証部門、検査部門の合計5部門が工程FMEAの検討会に加わり、皆で議論する。(作成:日経 xTECH)
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 気付くには、関係する部門が参加して皆で議論しなければなりません。工程設計を行う生産技術部門だけの知見では、気付ける不具合に限界があります。トヨタグループでは、生産技術に加えて、設計部門、製造部門、品質保証部門、検査部門が工程FMEAの検討会に参加し、皆で議論します。これらの異なる5つの部門が議論するためには、不具合を防止する工程がどうなっているか、不良品を流さない工程がどうなっているかを「見える化」しておかなければなりません。だからこそ、先の通り[1]機能の分割、[2]原因防止の工程、[3]検出方法の項目を記述した工程FMEAのワークシートを作成する必要があるのです。

 ISO推奨のワークシートを使っていると、工程FMEAの検討会と称しつつ、単に「評価点」の各項目(発生度、影響度、検出度、重要度)の点数を確認するだけで終わってしまいがちです。これではまさに形骸化です。

 品質関連のさまざまな教科書を読んでも、ほぼ手法の説明に終始しています。工程FMEAでは、皆で議論して気付き、不具合の未然防止につなげることが最も大切なのに。議論することの重要性を指摘する本が世の中にないのは残念です。

トヨタグループでは、工程FMEAの議論(検討会)にどれくらいの時間をかけるのでしょうか。

皆川氏:新規の生産ラインには特に時間をかけます。5部門から人が集まって最低でも2週間(10営業日)は費やします。工程FMEAの検討会が1回4時間として、4時間×10日間=40時間といったところでしょうか。ただし各部門から2人は参加するので、延べにすると40時間×10人=400時間分の議論を行うことになります。

 これを生産技術部門の2人だけで行った場合、せいぜい延べ80時間に過ぎません。専門分野に偏りがある上に、議論の時間も短いのです。これを知れば、皆で議論することの大切さがよく分かると思います。

 最後にもう一度言わせてもらいます。「工程FMEAやらずして、工程設計したとは言えない!」と。

皆川 一二(みながわ かずじ)氏
元デンソー、元トヨタグループSQCアドバイザー、ワールドテック 講師、中部品質管理協会 講師、小松開発工業 顧問、トヨタ自動車 非常勤講師
皆川 一二(みながわ かずじ)氏 1966年に日本電装(現 デンソー)入社。トヨタ2000GTをはじめ、多くの燃料噴射装置や電子制御式燃料噴射装置(EFI)の開発設計に従事。EFI用コンポーネント、インジェクタ、エアフローメーター、燃料ポンプなどの開発設計も担当。車載システムと製品の開発設計で豊富な経験がある。2003年、デンソーテクノ 電子制御式ガソリン噴射製品設計部長。その後、デンソー テクノ品質管理部で品質教育企画および社内品質教育講師、トヨタグループ SQCアドバイザを歴任。ワールドテックでの品質教育講師として、現在に至る。