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昭和のものづくり

 話を戻します。昭和初期の動力はモーターですが、今とは違って工作機械ごとにモーターが内蔵されていたわけではなく、工場に置かれた1台の大型モーターから各工作機械に回転を分割していました。その仕組みは、大型モーターの回転を一旦天井に設置した回転軸にベルトを介して回転を伝えます。そして、この回転軸から再びベルトを介して、床に置いた各工作機械の回転軸につないでいたのです。そのため、工場内の工作機械は全て天井の回転軸とベルトでつながっているという光景が広がっていました。

 この様子をミニチュア模型で見ることができるのが、東京の大田区郷土博物館です。ミニチュアと言っても大変精密に作られているので、当時の臨場感がひしひしと伝わってきます。また、東京九段下の昭和館にも昭和20年に使用していた実物の旋盤が展示されています。70年以上昔のものですが、現在の汎用旋盤と見かけは全く変わりません。裸電球の下で黙々と作業されていた旋盤工の方々の息遣いが聞こえてきそうです。

 このように、各地の郷土博物館にはものづくりの参考になるものが数多く展示されています。農業で使っていたものや機織りに使っていた展示物は、現在でいう「治具」です。誰もが楽に正確に加工できる工夫がされています。まさに「作業改善」のたまものです。当時もコツコツと改良を重ねて、出来上がった時には皆を呼んで自慢したのかな、と想像すると温かい気持ちになります。ものづくりの楽しさは、貧しかった時代もきっと同じだったのではないでしょうか。