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寺倉 修 氏
寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 前回のコラムは「お客様満足度100%の再認識」について述べた(第31回)。これは、2018年1月号の特集「日本品質 復活への道」を読んで感じた思いの1つだ。今回は、この特集を読んで感じたもう1つの思いについて取り上げたい。それは、こうした不祥事を起こさない「源流管理のありよう」だ。特集は主に検査などの現場に焦点を絞っているが、源流管理の取り組みを振り返る必要もあるではないかと考えたからである。

 特集では、神戸製鋼所をはじめ一連の品質データ改ざんの対策として、検査の自動化などさまざまな提言が行われている。それはおおむね「流出防止」に注目してのことだ。一方、不具合が起こった場合は「発生源」に遡り、その対策を打つことがより重要となる。この「発生防止」を忘れてはいけない。

 大きな品質不具合が起こった場合、まず速やかに暫定対策を打ち、続いて本対策を打つ。流出防止策はこの暫定対策レベルを主に議論することになると私は考える。

 日本のものづくりの素晴らしさの1つは、図らずも品質不具合が起きてしまったとしても、徹底的に原因を掘り下げ、いわゆる「真の原因」を突き止めて対策を打つ点にあったはずだ。例えば、有名な品質管理手法である「なぜなぜ分析」の狙いは、まさにここにある。

 私にはこんな経験がある。電子素子を基板と共に樹脂でインサート成形する設計を手掛けた。生産を始めると基板が熱で大きく変形するものが出た。そこで、まずはX線で変形量を全数検査し、選別出荷を行った。出荷検査段階で暫定対策を打ったのである。そして、平行して基板へ熱が伝わりにくくなる設計的な対応を取った。設計変更による本対策である。流出防止だけでなく、発生防止対策を打ったのである。その後、暫定対策であるX線検査をやめたのは言うまでもない。

 発生防止の対策には、真の原因を明らかにしなければならない。真の原因は、技術上の原因と管理上の原因の両面から検討する必要があることは、先のコラムで述べた(第24回)。言うまでもなく、今回の品質データ改ざんは、検査値が規格(仕様)を満足していれば起こりようがない。従って、さらに議論を深めようとするなら「上流工程に真の原因がある」と考え、技術上の原因と管理上の原因を共に議論すべきだろう。ただ、私は議論に耐える情報をもちろん持たないし、当事者以外が、そこまで議論する意味があるのかとも思う。

 だが、こうは言える。それは、このコラムの第2回で取り上げた「決裁を形骸化させてはならない」ということである(第2回)。言い換えると「仕事を形骸化させてならない」ということだ。