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寺倉 修 氏
寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者

 「世界No.1製品」とは、Q(品質)とC(コスト)とD(投入時期)のうち、いずれか1つ以上がダントツであること──。本コラムでこう主張してきたことを覚えているだろうか。今回は「世界No.1製品」を目指した取り組み事例を紹介しよう。

 1990年代、世界の多くの国々がものづくりによる日本の経済発展をモデルにする一方で、日本は「失われた10年」とも言われる時代に突入しつつあった。自動車業界では、フランス・ルノー(Renault)が日産自動車へ資本参加し、ドイツ・ボッシュ(Bosch)が当時のゼクセルを子会社化するなど、海外メーカーの日本進出が活発となった。こうした動きにより、自動車部品にはボーダーレス化による価格破壊の波が押し寄せた。

 当時デンソーにいた私の担当分野も例外ではなく、手持ちの製品の次期型の拡販だけでは現状維持すら困難な状況が予測された。そこで、新製品を開発して売り上げ目標を達成することを「職場の最重要課題」に設定したのである。

 新製品の開発に先立つものといえば、開発資源である人工(人と工数)と資金だった。ところが、「新製品を開発する」と旗印を掲げても、人も金も補填されなかった。意気込みだけの状況では当然のことである。

 そこで、職場内で人と資金を捻出する取り組みを開始した。それは、アウトソーシングである。実は、自動車部品は生産数が100個/月であっても1万個/月であっても、開発設計工数は大きくは変わらない。売り上げの多寡の影響は受けないのだ。なぜなら、自動車部品は生産数に関わらず、重致命故障をゼロに、一般故障では市場クレームをppmオーダーに抑えなければならないからである。

 私は異なるシステムに使われる複数の製品を担当していた。それらは売り上げがそれなりに大きい製品もあれば、売り上げが少ないものもあった。そこで、製品別に設計者1人当たりの売り上げを計算し、設計者1人当たりの売り上げが大きいものを存続させ、小さいものはアウトソーシングすることにした。ここで、売り上げの大小の判断基準には、事業部にいる設計者1人当たりの売り上げ目標値を使った。

 まずはこうして「選択と集中」で開発体制を確保した。次は、取り組むべき新製品の選定だ。事業が現状維持すらできない先細りの状況に陥り、挽回の取り組みをしなければならなくなったことが問題点だったので、まずはこの問題点を振り返った。その振り返りを踏まえ、新製品の選定方針を決めた。現在の状況に陥った問題点を把握し、その問題点の「真の原因」を見極めたのである。そして、この真の原因を踏まえ、新製品の選定方針を決めた。