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ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏
ワールドテック 代表取締役、元デンソー設計開発者 寺倉 修 氏

 今年(2018年)の「ものづくり白書(製造基盤白書)」に「ワールドテックの提言」が取り上げられた。製造業の品質データ改ざんに対し、「品質保証体制の強化には、製造現場でのシステム導入などだけではなく、ものづくりの上流に位置する設計段階での心掛けとともに、組織としての仕事の在り方の振り返りも必要となってくる」との趣旨である。「設計力の魂」が大切ということだ。

 前回は設計段階の上流にある「先行開発」を取り上げ、開発製品を選ぶ方針決めの重要性を述べた。今回は、その方針に基づく「製品選定活動」と、その製品の「世界No.1」を目指す「開発方針決め」を取り上げる。

 新製品の選定方針は、前回触れた通り「売り上げが大きいと見込まれる汎用システムを対象に、世界に通用する製品を選定する」というものだった。そこで、まずはシステム分野の選定に取り組んだ。当時担当していたのは車載センサーだ。車載センサーは電子制御ユニット(ECU)とアクチュエーターのセットで電子制御システムを構成する。数十種類の電子制御システムを手掛けていたが、それぞれについて装着率の推移など将来動向を推測し、車載センサーの市場規模の定量化を試みた。

「○○エンジン系は○億円と最大の市場であり、その後の燃費規制や排出ガス規制の強化にともなってガソリン直噴(GDI:gasoline direct injection)などの新しいシステムが投入されるが…」

「シャシー系や空調系もここ数年は…」

「駆動系は自動変速機(AT:auto-transmission)の電子制御化が急激に進んでおり…」

「ボデー系は先進安全自動車(ASV:advanced safety vehicle)やキーレスなどの各種自動化関係が今後伸びるから…」

 こうして市場規模の定量化を進めた結果、選んだのは駆動系分野だ。まだ市場は小さかったが、急速に電子制御化が進んでいて市場の拡大が期待できた。大変だったのは、上位システムを知るための情報収集だ。ほとんど知見を持ち合わせていなかったため、聞き込みや文献調査などを繰り返した。「足で稼ぐ地味で根気の要る取り組み」を実施したのである。

 続いて、センサーの絞り込み作業に移行した。駆動系システムの推移と、それにともなう制御の動向を考え、その制御をコントロールする物理量を捉えて、その物理量を扱うセンサーを割り出した。

「ATは電子制御E-AT、…、無段変速機(CVT)へと進化する。システムの進化にともない、制御自体も基本制御である継合制から応答性制御、…など、高度化していく。それにともなって多くのデバイスが求められる。中でも全てのシステムに必要なセンサーAは世界で…市場が見込まれ、かつ、現時点では成長段階にある…」。

 こうした検討を経て、開発するセンサーを選定した。システムの推移とその制御の動向を予測し、使われる各製品の「市場規模を定量化」したのだ。「ロードマップ」の見極めである。ここでも、多くの情報を集めるには、足で稼ぐ根気のいる取り組みが必要だ。