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実現していない真のニーズを見いだした開発事例

 これらの切り口のうち、「この機能が真のニーズであると分かっているが、いまだに実現できていない」というものを選び、それを実現した事例がある。私がデンソー時代に手掛けた、オートワイパーシステム用レインセンサーの開発である。

 このシステムは、フロントガラスに付着した雨滴の状態をセンサーで検知し、内蔵のマイコンで雨の降る状態に合ったワイパースピードを決定。ボディーの電子制御ユニット(ECU)がこのセンサーからの信号に応じてワイパーを駆動させるというシステムだ。1990年代後半に国内で初めて車両に搭載された。当初はオプション設定だったが、2年ほどたって車両グレードによる標準設定が決まった。その標準設定用に性能を高め、かつコスト削減を施した次期型製品を開発することになったのである。

 この開発で、世界で初めて「オートイニシャライズ機能」を我々は搭載した。クルマに乗った際に雨はやんでいるが、フロントガラスには水滴が残っている場合がある。このときに、キーをオンすると同時に自動でワイパーが一拭きして視界を確保する機能が、オートイニシャライズ機能だ。従来は手動でワイパースイッチを操作して拭かなければならなかったが、これを自動化したのだ。当時ドイツ・ボッシュ(Bosch)など数社がこのセンサーを市場に出していたのだが、オートイニシャライズ機能はなかった。この機能に対するニーズはあったが、実現していなかったのだ。この事実を見いだした我々は、開発目標項目にこの機能を設定し、具現化したのである。

 このように、機能や性能、信頼性、体格、美しさ、重さ、取り付けやすさ、コストなど、多くの要素の中から、ダントツ目標値を狙う「目標項目」を「根拠」を持って選ぶことが大切だ。

 今回はダントツ目標値の妥当性を支える4要件のうち、目標項目の妥当性を取り上げた。他の3要件については順次述べていく。