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 新型コロナウイルス感染症への対応に官・民が共に追われている。こうした突発的な問題に対処する手順が決まっているに越したことはないが、“言うはやすく行うは難し”。手探りの対応となる。

 ものづくりにおいて、突発的な出来事として真っ先に挙がるのが品質不具合だ。幸か不幸か、品質不具合は古くて新しい問題で、大部分の企業は何らかの手順を決めている。手順が決まっていれば、関係者全員がゴールに到達すると信じて取り組める。不要な手戻りは起こりにくい上に、どうしてよいか分からずにおろおろすることもないだろう。

 もちろん、対応策があり、その手順が決まっていても対応が思い通りに進むとは限らない。山や谷があっても乗り越えなければならない。人・組織のありようや、やりきる風土など、さまざまな要素が必要だが、とにもかくにも、手順が決まっていればスタートラインに立てる。手順があることが大切なのだ。今回は品質不具合の手順を取り上げよう。

自動車部品の市場クレームへの対応

 品質不具合には、工程内不具合と納入先不具合、市場クレームがある。どの不具合にも速やかに対応しなければならないが、中でも人命や法規制違反(例えば、燃費・排出ガス規制など)に関わる不具合は重大故障であり、時間との戦いとなる。加えて、市場クレームも緊急性を要するものとなる。

 市場クレームへの対策手順を以下に示そう。対象は自動車部品(製品)だ。設計原因と製造原因とで対応が異なるため、ここでは設計原因の場合を取り上げる。全部で26項目がある。

市場クレームへの対策手順
市場クレームへの対策手順
全部で26項目ある。(作成:日経クロステック)
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  • [1]品質不具合の情報収集
    発生地域や発生月、台数、走行距離と経過月などの情報を収集する。
  • [2]故障部位と壊れ方の確認
    故障モード(どのような壊れ方をしているか)を確認する。
  • [3]故障の影響の把握
    上位システムへの影響とエンドユーザーへの影響を把握する。
  • [4]対象ロットの特定
    品質不具合はいつからいつまでの生産分が該当するかを特定する。
  • [5]N増し(サンプル数を増やすこと)情報収集と回収
    必要に応じて品質不具合発生状況についてさらに情報収集を進め、品質不具合品の回収数量を増やす。
  • [6]発生確率の予測
    故障モード(初期故障、ランダム故障、摩耗故障)を見極め、かつ発生確率を推定する。ワイブル解析などを活用する。
  • [7]納入先への報告
    納入先(上位システム)に[1]~[6]についてタイムリーに報告し、情報の共有を図る(迅速な対策を打つには、これが欠かせない)。
  • [8]暫定対策の立案
    壊れ方から暫定対策案を決める(特性の中央値品のみを全数選別納入する。あるいは、故障ストレスを推定し、出荷前に全数短時間加速耐久評価を行うなどの方法がある)。
  • [9]暫定対策品の納入先承認
    納入先に暫定対策案を報告して承認を得る。
  • [10]暫定対策設計変更
    暫定対策に設計変更が必要な場合(締め付けトルク幅の変更や、カシメ力の変更など)、臨時的に設計を変更する。
  • [11]真の原因調査
    故障の原因となる市場ストレスを推定する。推定したストレスから故障現象を再現する評価項目と条件を設定し、再現評価を行う。
  • [12]現地調査
    可能であれば、故障した状況を現地・現物で確認する。納入先へ申し入れるなど、諦めずにトライすることが大切。
  • [13]故障現象の要因分析
    品質管理の要因分析手法などを使い、故障に関係する要因を抽出する。
  • [14]抽出した要因の絞り込み
    故障した市場環境(ストレス)を推定、その推定したストレスを踏まえ要因を絞り込む。絞り込みは、机上検討と簡便なストレス評価の組み合わせなどで行う。
  • [15]再現試験の条件設定
    絞り込んだ要因を基に、故障の再現試験(耐久)条件を設定する。
  • [16]再現評価テスト
    設定された再現試験(耐久)条件で評価を行う。
  • [17]再現評価条件の見直し
    経験的に、市場の故障モードの再現は簡単ではない。評価条件の見直しを複数回行わなければならない場合が往々にしてある。暫定対策品の期間をいかに短くできるか、時間との戦いになる。
  • [18]本対策の決定
    再現できれば、本対策の内容が決まる。
  • [19]納入先への報告と承認
    再現評価の状況は適時納入先に報告し、本対策の承認を得る。
  • [20]本対策設計変更
    本対策の設計変更を行う。設計変更が他の部位へ悪影響を及ぼさないことに注意する。この点をおろそかにすると、別の品質不具合を引き起こすことになる。
  • [21]設計変更品による効果の確認
    設計変更品を量産ラインで流し、そのものを評価する。この評価では、出荷前の簡易評価(評価条件は決めておく)に加えて、再現評価(耐久)の条件に基づく評価も実施する。
  • [22]納入先の組み付け立ち会い確認
    納入先の組み付けに関係する設計変更の場合は、納入先のラインで組み付けに問題がないかどうか立ち会い確認を行う。

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