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 デンソーが自動車部品のリコールで2020年3月期決算は大幅減益との報道を目にし、こう思った。「品質不具合はなくならない」「在宅勤務で、品質不具合は減るのか、増えるのか?」と。

 言うまでもないが、在宅勤務を進めて品質不具合が増えるのでは本末転倒だ。ものづくりは自然が相手。「在宅だからこれぐらいでよいだろう」というのでは市場クレームへ直行だ。怖いのは、気づかないうちに「これでよいだろう」という罠(わな)に陥ることだ。どのような場合にそうなるのか。

 商談の場合、既にレールが敷かれているときはWeb商談でも十分な効果があるが、新に開拓中のお客様対応にはWeb商談では限界がある。画面の向こうから「この続きは職場でお会いしてから」とお客様。だが、もちろんまだ会えない。対面すれば一気呵成(かせい)に契約まで……と悔しい思いをしている。

 開発設計も同じだ。既にレールが敷かれている製品の設計は在宅勤務でも対応できるであろう。「類似製品」と「次期型製品」の一部が該当し、確立した設計標準を使って設計が完結する。もちろん、職場のシステムに十分アクセスできる開発環境があることが前提だ。

 だが、新たな技術や構造を持つ「次世代製品」や「革新的な製品」は、既存の設計基準だけでは対応できない。技術や知見の開拓が必要だ。在宅勤務でなくとも「ここまでやったんだから」と思いがちだ。ましてや、在宅勤務では「これでよいだろう」の罠に陥っても不思議はない。

開発設計の在宅勤務で陥りがちな罠
開発設計の在宅勤務で陥りがちな罠
(出所:日経クロステック)
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「これでよいだろう」の罠にはここで陥る

 設計プロセスに沿って、「これでよいだろう」の罠に陥りやすい主な業務をピックアップしてみよう。

[1]商品仕様(お客様の真のニーズ)を把握したつもり

 自動車メーカーの技術者と新たな製品の開発について打ち合わせた時のことだ。その人は新しい電子制御システムを丁寧に説明した。しかし、私はそのシステムを初めて耳にしたため、システム全体はもちろん、自分が担当する部分の製品すら理解することが難しかった。

 顧客の説明を100%理解することは簡単ではない。ましてやこの事例のように、白紙の状態で新たなシステムについて聞き、そのシステムにぶら下がるコンポーネントの商品仕様を把握することは対面でも容易ではない。新規性の高い開発品の商品仕様をWeb会議のみで把握したつもりになってはいけない。

[2]設計目標値を設定したつもり

 設計目標値を決めた時点で、「競合に勝てるか」「利益が出るか」が決まると既にこのコラムで述べた。競合製品をベンチマークせねばならない。競合企業の製品を入手して機能や性能を調べ、分解精査して、コストを見積もる。だが、これらへの対応は在宅ではあまりにも限定される。ベンチマークをしたつもりになってはいけない。

[3]ネック技術をめど付けしたつもり

 競合企業に勝てる設計目標値は、多くの場合、容易に達成できない技術(ネック技術)課題を持つ。シミュレーション技術は進化しており、年々理論解析だけで(机上で)検証できる範囲が広がっている。だが、それでも自社の職場で新たに手掛ける技術はシミュレーションで詰めつつ、最後はもの(製品)で検証したい。間違いのないノウハウが積み上がるからだ。机上のみでめど付けしたつもりになってはいけない。