全2111文字
PR

非接触社会における開発設計部門の課題

 そうした先輩や係長、課長の姿を間近に見て、接しながら職場で得るさまざまな経験が、設計者として成長する糧となった。思いめぐらしたような素晴らしい設計者にはなれなかったが、その理想を目指して努力し続けることができたと自負している。

 先輩の背中を見て学んだことはこうだ。技術に妥協してはいけない。解が見つからないからと諦めてはいけない。原理原則に則(のっと)って取り組む。常に一歩高い目標を設定し、目指し続ける。「これくらいでよい」と妥協したら設計者としてやっていけない──。

 「背中を見て育つ」とは、こうした教訓を先輩の立ち居振る舞いから「心」にすとんと落とすように理解することだと思う。

 在宅勤務が多い現在でも、新入社員には先輩の背中を見て育つ機会が必要だ。諸先輩が仕事に取り組む姿勢を間近に見て、感じて、教えを請う。解決策がすぐに見つからない技術課題は先輩と共に悩み、試行錯誤して、苦しみながら解を求め続ける。こうしたことができる環境が大切だ。

 背中を見て育つという教えをおろそかにしてはならない。在宅勤務を踏まえ、職場として取り組まねばならない大きな課題だ。多くの職場の工夫を期待したい。

寺倉 修 氏 (てらくら おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修 氏 (てらくら おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、高級車「レクサス」への搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発・設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザイレビュー」と題して講演。著書に『世界No.1製品をつくるプロセスを開示 開発設計の教科書』(日経BP)などがある。