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 自動車の電動化に必要な安全システムを構成する製品の高機能化を狙い、世界初の方式(要素技術)を取り入れたときの経験だ。その製品は2019年の「第46回東京モーターショー2019」で顧客企業がブースに展示した。

 職場の既存の技術(基盤技術)で対応できる設計部位であれば、先のベンチマークの事例と同様に在宅でも設計は可能だ。ところが、この製品開発で新しい要素技術を取り入れようとしたところ、基盤技術だけでは解が見いだせなかった。製品の目標性能を満たすには、構造上で「+α」の工夫が必要だったのだ。メンバーの口角泡を飛ばす議論と執念が技術のブレークスルー(技術の阻害要因の打破)をもたらした。

 具体的にはこうだ。高額なシミュレーションソフトを購入して解析を駆使。大学に研究員を送り込みもした。しかし、時間のみが過ぎた。最後は、メンバーの1人の「このような構造で試してみたら」という一言が結果につながった。誰もが「まさかそんなことで」と端(はな)から捨てていたアイデアを、その担当者が試してみた。それがブレークスルーにつながったのである。

 このように、技術のブレークスルーには、机上検討と現物評価を組み合わせることが大切だ。対面が、「技術の阻害要因を突破するぞ」との思いをチームで共有する原動力となる。こうした、新たな知識・知見を見いださねばならない開発設計は、在宅と出社の「ハイブリッド勤務」が効率と質を高めるはずだ。

 開発設計では、在宅勤務で業務効率が高くなるか否かを一律に扱うのは無理がある。「仕組みや管理」の課題と「知識・知見」が持つ課題との両面から、開発設計の個々の業務が在宅勤務で十分対応できるかどうかを見極めねばならない。その上で、担当者が在宅で集中して仕事をすれば効率は上がるはずだ。

寺倉 修(てらくら おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修(てらくら おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、高級車「レクサス」への搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発・設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザイレビュー」と題して講演。著書に『業界No.1製品をつくるプロセスを開示 開発設計の教科書』(日経BP)などがある。