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 2021年度の打ち上げを目指す「H3ロケット」。本来は今月(2021年3月)末までの打ち上げ予定だったが、延期された。新型エンジンに亀裂やひび割れが確認され、設計の見直しが必要になったと報道された。H3は「H2Aロケット」の後継機で、従来の打ち上げ費用である1機当たり100億円を、半分の50億円に減らす。電子部品の多くを自動車用電子部品に置き換え、3Dプリンターで部品を造るなど、コストダウンのために新たな試みを取り入れたとのことだ。

H2Aロケット35号機の打ち上げ
H2Aロケット35号機の打ち上げ
(写真:PIXTA)
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 かつて、地球と宇宙とを行き来する主役は米国の有人宇宙船「スペースシャトル」だった。この宇宙船の設計思想は、次のように言われていた。「Conservative Design(保守的な設計)、Existing Hardware(実績のあるハード)」と。これがスペースシャトルの合言葉。ロケットは、自動車の開発とは違って試作機を何度も打ち上げるわけにはいかない。実績のあるものを使い、不用意に変えないことが、設計の基本ということだ。

 とはいえ、高く掲げた目標を達成しようと思えば、新たな技術や方式、部品を実績がなくても積極的に設計に取り入れなければならないときもある。自動車用電子部品の採用は、打ち上げ費用の半減という高い目標を達成するために、実績にとらわれない設計の結果なのだろう。

 ただし、実績を踏まえない設計は潜在的に品質不具合を起こす可能性が高くなる。実績のない、いわゆる新規性の高い設計が一発でうまくいくのは稀(まれ)だと経験的に思う。逆に、「失敗は成功のもと」。失敗するということは、成功への階段を上りつつあるということだ。

実績のないものをDRBFMで対応

 「実績のないもの」を設計に取り入れるスタンス(取り組み姿勢)を、品質不具合の未然防止手法である「DRBFM(故障モードに基づく設計審査)」とからめて取り上げよう。

 DRBFMの基本は、抜けなく「変化点」を挙げることだ。実績のない技術や部品とは「変化点」である(環境が変わることも変化点だが、ここでは部品にとどめる)。変化点の大小・多少は、製品の新規性で異なる。製品の新規性については第21回で述べた。新規性を[1]革新的な製品、[2]次世代製品、[3]次期型製品、[4]類似製品、の4分類で示している。

 まず、[1]の革新的な製品の変化点とその対応。世の中にない製品はもちろん、自社にとっては初めての製品も、その企業にとっては革新的だ。言うまでもなく、自社で初めての製品は全ての構成部品が変化点だ。この変化点は、自社の知見や知識でカバーできないものと、カバーできるもののいずれかに分かれる。

 前者の(カバーできない)変化点は、職場に知見や知識がないので、品質不具合の未然防止のハードルは高い。DRBFMの帳票(ワークシート)を机の上に置いて、思いつくことを書き込むだけでは品質不具合は防げない。DRBFMの取り組みの基本を押さえねばならない。すなわち、関係者が集まって知見を出し合い、意見をぶつけ合うのだ。こうしてシナジー効果を引き出し、新たな知見を生み出せるように取り組むのである。

 そうはいっても、可能性のある全ての品質不具合の原因と、抜けのない設計的な処置を見いだすのは容易でない。ここで品質不具合を持ち越すと、本番の試験・実験や市場において品質不具合が顕在化してしまう。

 一方、後者の(カバーできる)変化点について、知見や知識があるなら担当者任せでもよいのだろうか。このコラムの読者の答えはもちろん、「いいえ」だろう。なぜなら、品質不具合の多くは同じ原因で繰り返されるということを既に理解しているはずだからだ。