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不具合が再発した理由

 修理が終わって一段落したので、「なぜ過去の経験が生かされなかったのか」について職場で話し合うことにしました。振り返り会です。さまざまな意見が出ましたが、全員で出した答えは、「過去の失敗事例を勉強する機会がない。設計基準類を設計に反映したか否かをチェックする場もなかった。その結果、不具合が再発してしまった」というものでした。

 技術上の対策を取るだけでは、同じ不具合を防げない。「仕事のやり方のまずさ」が不具合を繰り返していると気づいたのです。

 そこで対策として、次の2つの仕組みを設計プロセスに組み込む、つまりルール化することにしました。1つは、定期的に過去の不具合について勉強会を開催すること。もう1つは、検図の項目に圧縮代の確認を入れることです──。

仕事のやり方のまずさを「仕組み」に落とし込む

 このケーススタディーから分かったことは、同じ不具合を繰り返さないためには、設計変更のような「技術上の対応」にとどまらず、「仕事のやり方のまずさ」を明らかにして、「仕組み」に落とし込まねばならないということだ。以下、仕事のやり方のまずさを「管理上の原因」と呼ぶ。

 不具合は、まず「技術上の原因」を明らかにし、技術上の処置を取る。次に、管理上の原因を見極め、管理上の処置、すなわち仕事の仕組みの見直しを行わねばならない。つまり、技術上の原因と管理上の原因を明らかにし、それぞれの対策を取って、ようやく不具合の対策が完了する。

 技術上の原因を明らかにする品質管理ツールと、管理上の原因を明らかにする品質管理ツールとは異なる。前者はFTA(Fault Tree Analysis;故障の木解析)が代表格のツールだ。特に「TOP事象」と呼ぶ重大な不具合に対して力を発揮する。

 一方、後者のツールが、なぜなぜ分析である。なぜ、まずい仕事のやり方をしてしまったのかについて、なぜなぜと掘り下げていく。こんなまずい取り組みを行ってしまった。なぜそのように取り組んだのか。このようなまずい取り組みがあったからだ。さらに、そのまずい取り組みをなぜやってしまったのか、と深く掘り下げる。

 今回のケーススタディーでは、次のように掘り下げていく。

  • なぜOリングにクラックが入ったのか ⇒ 過圧縮になっていたから
  • なぜ過圧縮になったのか ⇒ Oリングの溝深さが浅かったから
  • なぜ溝深さが浅かったのか ⇒ 別の機種のOリング形状をまねたから
  • なぜまねたのか ⇒ 圧縮率の設計基準を知らなかったから
  • なぜ設計基準を知らなかったのか ⇒ ………

 こうして最後に行き着いた原因が、「固有技術の指導および教育がなかった」とすると、それが真の原因だ。

 真の原因を見極めれば、対応策は決まる。なぜなら、「真の原因の裏返し」が「対応策」だからだ。この場合の対応策は「固有技術を教育する仕組みをつくること」となる。同じ技術が原因の不具合を繰り返さないためには、技術上の対応だけではなく、管理上の原因を見極めて仕組みを改善せねばならない。

 不具合を起こしたときに真の管理上の原因を見極めているか、一度振り返ることが大切だ。

寺倉 修(てらくら おさむ)
ワールドテック 代表取締役
寺倉 修(てらくら おさむ) 実務経験に基づく真の「設計力」を定義し、実践的設計論を説く設計分野の第一人者。 1978年、日本電装(現 デンソー)入社。車載用センサーおよびアクチュエーターの開発、設計業務に従事。日本初のオートワイパー用レインセンサー開発、高級車「レクサス」への搭載を実現したほか、20種類以上の車載用センサー、アクチュエーターを開発・設計。 2005年、ワールドテック設立。製造業への開発・設計・生産などの技術を支援。2010年、東京大学大学院経済学研究科 ものづくり経営研究センター(MMRC)コンソーシアムで「モノづくりを支えるもう一つの力『設計力』」と題して講演。企業活力研究会「平成22年度 ものづくり競争力研究会」委員。 2014年、東京大学大学院経済学研究科 MMRCコンソーシアムで「『設計力』を支えるデザインレビュー」と題して講演。著書に『世界No.1製品をつくるプロセスを開示 開発設計の教科書』(日経BP)などがある。