全2061文字
PR

 日経ビジネス2021年6月14日版の「賢者の警鐘」は、東レの日覚昭広社長が「『なぜなぜ』と掘り下げ、次の一手を決めてきた」ということを述べていらっしゃった。筆者は「まさにその通りだ」と膝を打った。

 「なぜなぜ」と繰り返す取り組みは、第36回と第37回で既に取り上げている。設計プロセスの先行開発段階で開発する製品を選定する「方針決め」や、競合メーカーに勝つ目標項目を選定する方針決めに「なぜなぜ分析」を活用した。なぜなぜ分析は、価値ある取り組みである。今回はケーススタディーを使って、なぜなぜ分析の狙いを解説しよう。

ケーススタディー:タンクの水漏れ

 お客様から連絡が入りました。タンクから水が漏れているので、すぐに見に来てほしいとのこと。水漏れは、あってはならない不具合です。飛んでいって調べると、漏れたのはOリングで封止している箇所でした。Oリングにクラックが入り、そこから漏れたのです。

 なぜクラックが入ったのか。取り付け部位を調査して分かったのは、Oリングの圧縮代(しろ)が大き過ぎたことでした。基準から外れていたのです。早速、Oリングの取り付け部の寸法を変更し、基準内の圧縮代に戻しました。

 これでタンクからの水漏れは収まったのですが、この対策だけで同じ原因の不具合が今後起きないといえるでしょうか。

 2年がたちました。かつての不具合は過去の出来事と皆が思い始めた頃のことです。またタンクから水漏れが起きました。「再発だ」とお客様からは叱られ、大騒ぎになりました。

 原因は2年前と同じでした。Oリングを圧縮し過ぎたのです。不具合の経験が生かされず、同じ失敗を繰り返したのです。

 設計者は1年前に入社した若手社員で、聞くと、2年前の不具合を知りませんでした。加えて、Oリングの圧縮代が書かれている設計基準類も見ていませんでした。