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 「コラムを第1回から欠かさず読んでいる」という声を聞いた。ありがたい限りだ。ところが、その方から「7つの設計力」の「7つが何か、いまだに取り上げられていないのではないか」とのご意見を伺った。

 これまで80回以上続けてきたそれぞれのコラムに、その時々の話題を絡めて取り上げているのだが、今回のコラムでは読者のご意見を踏まえ、設計力を構成する7つの要素(以下、7つの設計力)を簡潔にまとめて紹介する。なお、設計力は[1]先行開発段階と[2]量産設計段階のそれぞれに存在するが、今回は後者の設計力を取り上げる。

 [2]の量産設計段階の設計力は、量産設計段階の目標を達成する必要十分条件である。まず、手順がしっかり決まっていること。続いて、その手順に従って作業をする良い職場環境があること。仕事の手順が決まり、良い環境があればおのずから良いアウトプットを期待できる。ただし、アウトプットがいつも正しいとは限らないため、正しいか否かを判断する基準が必要となる。

 アウトプットと判断基準を比べ、検討・議論、審議・決裁する場があれば、レベルの高いアウトプットが期待できる。手順と職場環境が必要条件、判断基準と議論・決裁が十分条件だ。これらは正しいアウトプットを得る前提条件といえる。

 前提条件を設計の仕組みに当てはめると、7つの設計力は以下となる。もちろん、目標は「120%」の品質の達成だ。

量産設計段階における7つの設計力
量産設計段階における7つの設計力
(作成:日経クロステック)
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量産設計段階における7つの設計力

 仕事の手順は「量産設計プロセス」、これが第1の設計力だ。量産設計プロセスは、構想設計や詳細設計から成る「基本プロセス」と、サポートツールを使った「サポートプロセス」、デザインレビューや決裁会議の「マネジメントプロセス」の3つのプロセスで構成される。それぞれがしっかりと詳しく決まっていなければならない。

 続いて、良い環境。第2から第4の設計力がこれに該当する。第2の設計力は、蓄積された「技術的な知見やノウハウ」だ。特に重要なのは失敗、すなわち品質不具合から得られた教訓である。教訓には2つある。技術上の教訓と管理上の教訓だ。これらの教訓は職場や企業が創業以来積み上げてきたもので、社員たちは莫大な費用をかけて学んできたものだから、大切にしたい。もちろん、製品固有の技術や要素技術の知見やノウハウも抜けなく備える必要がある。

 第3の設計力は、「各種ツール」だ。CADやCAE(応力、熱、流れ、磁気解析など)、モデルベース開発(Model Based Development:MDB)など。もちろん、以前からある品質管理手法も大切だ。これらのツールを場面に応じて使いこなす。

 第4の設計力は「人と組織」である。これは分けて説明しよう。まず「人」だ。設計に従事する「人」は技術者にとどまらず「設計者」でありたい。技術的な検討は言うまでもないが、検討結果をまとめて報告する機会があれば、積極的に取り組む。特許出願も基本的な業務である。ただし、これだけでは物足りない。忘れてはいけない大切な役割が2つある。

 1つは「社内組織間の調整力」だ。これは「図面は全社で描く」ために必要となる。図面は、設計以外にも品質や生産技術、生産、調達、企画など関係する全ての部門の英知や総力を注ぎ込んで、初めて「まっとうな図面」となる。従って、設計者は関係する部門のベクトルを合わせる組織間の調整力を高めねばならない。

 もう1つは「顧客へのプレゼンテーション力」である。設計者は、顧客側の技術者から信頼を得なければならない。なぜなら、設計段階でどの部品メーカー(サプライヤー)と付き合うかに関しては、顧客側の技術者の影響力が大きいからだ。「あの設計者は信頼できない」という評価は、「あのサプライヤーは信頼できない」という結論につながって受注することが難しくなる。従って、プレゼンテーション力を高めねばならないのである。

 ポイントは2つ。顧客が満足する技術報告書を作成することと、顧客に分かりやすく説明することである。