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 最近、印象深かった出来事がある。受講者の1人が、私の「デザインレビュー(DR)をDRする」とのフレーズにハッとしたと言った。研修の終わりに、DRの仕組みはこれで良いという完成形はないことにやっと気づいたのだ。その人にとっては青天の霹靂(へきれき)だったろう。

 研修の中で紹介する「仕組み」は事例で、それぞれの職場にあった形に置き換える。やってみて、問題点を見いだし、見直す。これが伝えたかったことだが、受講者は、受講中ずっと紹介する事例が答えだと思っていたのだ。今後その受講者は職場のDRの仕組みを継続的にDRしていくことだろう。

 以下は、この出来事から思うことである。仕組みはDRだけではない。開発設計では、設計プロセスや、組織間の連携であるコンカレント活動、知識や過去のトラブル(過去トラ)の残し方、残した知見の活用法、設計基準をはじめとする基準類の制定の方法などさまざまな仕組みがある。質の高い成果を出すには、仕組みが伴わねばならない。仕組みは、設計者や設計職場が持つ技術を成果に結びつけるのだ。

「仕組み」が業務を効率化する

 こういうことだ。人・物・金(リソース)は最低限に抑え、納期は短くして、もちろん厳守。「もう1人工(にんく)、もう1週間あればもっと深く検討できたが、ここまでしかできなかった」という言い訳は通用しない。品質不具合の発生や目標コストの未達をはじめ、あってはほしくないことが起こる。検討抜けを減らさねばならないし、手戻りも少なくせねばならない。手戻りが多いと検討抜けが増え、手戻りがさらに増える。いわゆる「悪魔のサイクル」に陥る。

 よって、仕組みの出番だ。仕組みがしっかりしていれば、効率的に業務が進む。検討抜けは減り、手戻りも少なくなる。手戻りが少なくなれば、検討抜けはさらに減る。全循環的なスパイラルアップが始まる。特に、リソースや納期が厳しい職場環境で力を発揮するのが仕組みなのである。

 だからといって、仕組みがあれば品質不具合は起こらない、コストは達成かというと、事はそう単純ではない。実は、仕組みの整備とは、成果を出すスタートラインに立つことだ。仕組みがなければ、スタートラインにも立てない。

 スタートラインに立つなら、準備をしっかりして立たねばならない。仕組みの質を高めねばならないのだ。方法はというと、仕組みを継続的に見直すことだ。例えば、DRをDRすれば、そうするたびにDRの仕組みの質は高まる。仕組みの質が高まれば、得られる成果の質と量も高まる。正確には「高まるポテンシャル」が得られるのだ。ポテンシャルを実に結びつけねばならない。

 実を得るには、仕組みを生かす取り組みができねばならない。「やったという実績づくりを目的にしないこと」が大切だ。仕組み通りやることが目的となり、内容が二の次となってはならないのだ。やったという実績づくりに陥ることを、仕組みの「形骸化」という。いくら充実した仕組みがあっても、形骸化すれば、成果は期待できない。