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 昨年(2021年)末に学生と意見交換する機会があった。製造業の開発設計業務についてだ。学生からは設計とはどのようなことをするのか、必要なスキルややりがいとは何かなど、さまざまな質問があった。

 それらの問い掛けにコメントしながら筆者が思ったことがある。それは、学生が知りたいことや不安に思うことは、現役の設計者の課題や悩みと重なるということだ。学生からの問い掛けの多くは、開発設計者に共通する悩みや課題であった。

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 主なものを紹介しよう。まず、最も多かった質問はこれだ。

Q(学生):製品開発設計のやりがいは何ですか。どのようなときにそれを感じましたか。

A(筆者):開発設計に没頭しているときは、他のことを思う余裕がなかった。開発設計業務はタフな仕事で、四六時中課題に追われていた。振り返ると、これをやれば給与や報酬が増えるなどといったことを考えたことは、全くといってよいほどなかった。というか、考える余裕すらなかったというのが本当のところだ。

 追われっぱなしでも続けることができたのは、目の前の課題を達成するという、その思いが原動力だった。課題が大きければ大きいほど、冷や汗をかきながら、プレッシャーに負けそうになりながら、突破しようとの思いは逆に強くなった。

 取り組み続けると、目標を曲がりなりにも乗り越えたと感じる瞬間が訪れる。その時に幸せな気持ちになったものだ。これが、いわゆる私にとってのやりがいだったのではないか。君たちはもっと格好良いことを期待したのだろう。もちろん、格好良く言うこともできる。例えばこうだ。

 開発設計者は、こうしたものを造ろうという自らの思いが製品という形になる。例えば、走っているクルマを見て、「あの部位に使われている部品は自分たちで設計したものだ」といった思いが、苦しい業務を乗り越える力であり、やりがいでもある。

 このように、やりがいは課題を乗り越える一歩一歩の節目と、その結果得られた成果物のそれぞれに存在する。だけれども、私は思うのだが、一歩一歩課題を乗り越えるたびに感じる満足感の積み重ねが、開発設計者にとっての本当のやりがいではないだろうか。全力で取り組めば、やりがいを感じながら開発設計を進めることができる。経験的にそう思うのだ。将来仕事に就いた時にぜひ思い出してほしい。

Q(学生):今の勉強が開発設計にどのように役立ちますか。

A(筆者):今取り組んでいることや学んでいることを大切にしてほしい。深みを持たせてほしい。将来の開発設計職場で、そのスキルが直接活用できればベスト。さらに磨きをかけ、誰にも負けないレベルを目指してほしい。

 ただし、現実には持てる技術を直接生かせる設計職場に就けるとは限らない。しかし、心配しなくても大丈夫。1つでも自信がある分野や技術があれば、開発設計をしながら周辺の技術を取り込むのは比較的容易だ。

 かつて私が経験した職場では、メカの設計者が、電子回路やソフトウエアを取り入れた自動車部品を設計するようになった例もある。この例のように、分野の異なる技術の取り込みには何が大切だろうか。私は、「プロ」としての意識が大切だと思う。

 ここで言う「プロ」とは、持てる力の全てを出して取り組み続ける人のことだ。プロとして取り組み続ければ、いつしかプロフェッショナルに届く可能性が高まる。企業内の制度ではあるものの、プロフェッショナルと認定された人を知っている。その人がプロとして取り組み続けた結果だと私は信じて疑わない。

 開発設計職場に就いたなら、プロとして取り組み続けてほしい。技術は付いてくる。