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 2022年5月1日付の日本経済新聞によると、人事コンサル大手の米コーン・フェリーがグローバル企業に20~21年に調査した結果、働きがいを感じる社員の割合は日本が56%と、世界平均を10ポイント下回り、23カ国中で最下位とのことだ。「やりがい」が課題というわけだ。このコラムでは第96回にやりがいを管理者の視点で取り上げた。今回は担当者の立場で取り上げる。

* URLは https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC182G00Y2A410C2000000/。

 アンケートの対象はグローバル企業だ。中小企業まで広げると、日本では仕事にやりがいを感じる社員は少数派ではないかと思うのは筆者だけではないだろう。仕事は、いわゆる「人生の旬」な時期の大きな割合を占める。通勤時間を含めると、日々の大半の時間を費やす人も多い。やりがいを感じることなく、多くの時間が過ぎ去るというのは避けたいことだ。

 やりがいを感じるには、「やりがいのある業務を探す」あるいは「機会に恵まれる」ことが必要だろう。しかし、希望した仕事に就けるとは限らない。むしろ、思ってもみなかった部署へ配属されたというのが現実だろう。だからと言って、不満を持つだけでは解決しない。

 では、どうするか。言い古されたことだが、与えられるのを待つのではなく、やりがいを感じるやり方を、担当者の立場で工夫することだ。

 開発設計を例にとる。この仕事も先輩や上司に言われるがままに作業するだけでは楽しくないし、やりがいも小さいだろう。自分なりに納得できる設計を心掛けることだ。

 例えば、顧客のシステムが変わり、製品が使用される環境の温度が高くなったとする。それまで使っていた樹脂材料では耐熱上問題があることが分かった。ある設計者は手っ取り早く先輩に聞くだろう。

設計者:「お客様の温度環境がこれまでよりも20℃高くなりました。今までポリプロピレン(PP)を使ってきましたが、このままでよいでしょうか」

先輩:「ポリアミド(PA)に換えるべきだ」

設計者:「分かりました。PAに切り替えます」

 指示通りに図面の材料表記をPAに変えて「終わった、終わった」と設計者は一安心だろう。ところが、このやり方では設計のやりがいも楽しさも感じられない。さらに言えば、設計者として成長する機会を逃すことになる。