全2051文字
PR

 「仕事が成功すれば幸せになれる」のではなく、「幸せだから仕事が成功する」という言葉に出合った。我が意を得たりだ。日経BP総合研究所のリポートに取り上げられたハハピネスプラネット(東京都国分寺市)CEO(最高経営責任者)の矢野和男氏の言葉である。

 「幸せ」とは「前向きな状態」のこと。「不幸」とは「後ろ向きの状態」であり、不安や恐怖が心を占めると同氏は紹介している。開発設計も、目標を達成するなど成果を出すには、幸せ、つまり前向きな状態が必要だ。今回は、この「成果は前向きな状態から」について取り上げたい。

 何かに取り組み始めると、それまでの不安や恐怖が和らぎ、後ろ向きで不幸な状態から、前向きで幸せな状態になる。もちろん、取り組みが楽ということではない。苦しいことが多いだろう。しかし、苦しくとも前向きな状態になることを、多くの人が一度ならず経験しているのではないか。

 筆者はささやかながら本を著しているが、書き始めるまで、正確には一文字を書き出すまでの心のハードル(プレッシャー)は半端なものではない。早くから取り掛かれば余裕が生まれるのは分かっている。だが、その分かりきったことができない。そうなると不安感がいやが上にも高まる。まさに後ろ向き、「不幸」な状態だ。やっとの思いで書き出しても、楽ではない。かなりの苦しさが伴うが、不安や恐怖は消え去る。苦しくとも、前向きな状態になるのだ。

品質不具合の発生に対する不安感も和らぐ

 開発設計の視点に戻ろう。かつての職場での経験だ。自ら設計した製品が、市場から品質不具合品として返ってきた。品質不具合発生の一報は、日常の中に突然やって来る。周りが一瞬、暗く感じるほどの一撃だ。仕事が手に付かなくなる。数日して、品質不具合品が目の前に届く。くたびれた外観は、市場で使われていたことを物語っている。見ている私の心も既にくたびれていた。

 設計以外の要因であってほしいと、すがる気持ちで性能確認・分解調査を行う。しかし、「品質不具合は、思い描く最悪のシナリオで進む」という“鉄則”がある。その通りの展開が待っていた。

 設計要因の可能性が高いと判断された。不安や恐怖がピークを迎える。対象ロットはどれくらいか、市場での発生確率は高いのか、設計対応策はあるのか。どうやら多発性の品質不具合のようだ、まずい……。心配と不安が一気に頭を駆け巡る。脂汗が出る、逃げ出したくなる、まさに「後ろ向きの状態」の最たるものだ。

 ところが、具体的に対応スケジュールの検討を始めると、不安感は徐々に弱まっていった。