PR

新製品の定義が変わる

 今後、製造業では特に「機能」や「スペック」は優位性になり得ません。これらは、既に世界共通で「当たり前」の要件となりつつあるからです。

 例えば、クルマ。今、クルマに普通に乗っていて突然故障した場合、「もしかして、製品に致命的な欠陥があるのではないか」とユーザーは思います。現在ではクルマはそう簡単には壊れないことが「当たり前」になっているからこそ、ユーザーはこう考えるのです。しかし、クルマが登場し始めた頃は、故障は決して珍しいことではありませんでした。このように、世界中の製造技術が向上した現在においては、製品がそれになりに頑丈でスペックが高いことは「当たり前」になっているのです。

 こうした中で、画期的な製品を企画する1つの方法があります。社会的課題の解決を目指すことです。これを「リーン思考」の考え方で確認していきましょう。リーン思考とは、ムダを徹底的に排除するトヨタ生産方式をモデルに米マサチューセッツ工科大学が考案した方法論です。生産管理以外にもソフトウエア開発や企業のプロジェクト管理、顧客からの要件定義、データ分析、スタートアップ企業の戦略などさまざまな活動に対して幅広く使えるように考えられています(「IoTの教科書」を参照)。

[1]最初に検討するのは「コンセプト」です。そのコンセプトは顧客にとっての価値であり、同時に顧客や社会にとっての課題の解決でなければなりません。
[2]続いて、ターゲットとする顧客や競争の優位性、広告チャネル、収益性を検討します。
[3]次に、それらを実現するための方法や技術を検討します。

 ここでは大まかな手順だけを書きましたが、結局、人工知能を使うかどうかを考えるのは、上記の手順における最後の[3]です。その前に[1]と[2]を実施する必要があります。この手順を間違えると魅力のない企画となり、代替品が存在して、造っても売れないという状況に陥りかねません。そうなると新しいビジネスとしては成立しないでしょう。

 逆に、[1]と[2]を実施した後に[3]を考えた場合、それは人工知能を使わなくてもできる、または人工知能を使うべきではないという結論に至る可能性があります。人工知能を使うことが目的ではなく、とにかく新しいビジネスを構築することが目的なのであれば、人工知能を使う必要がなくても構わないという考えを持つべきです。

 人工知能は現在ブームになっています。中には、「人工知能活用の先行者」というイメージをメディアへ向けてPRしたいがために、人工知能を使っている企業もあります。どうしても人工知能を使ったビジネスをしたいのであれば、何十、何百というアイデアを書き出していけばよいと思います。そもそも、1つのアイデアだけで成功するのは難しいということは言うまでもありません。こうして、多くのアイデアから人工知能で実現可能なものを見つければよいのです。

 人工知能ビジネスを確実に企画するために必要なのは、コンセプトづくりと、採用する技術を選択する際の順序を間違えないということに尽きます。