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自動車業界におけるNVIDIAという存在

 私は、米エヌビディア(NVIDIA)が2019年に自動車業界における台風の目になると思っています。半導体業界や自動車業界の人には有名ですが、それ以外の業界で働く人にはそれほど知られていない企業かもしれません。同社は半導体メーカーで、高速画像処理に特化した演算装置であるGPU(Graphics Processing Unit)を開発している企業です。最近は人工知能(AI)の計算を行う基盤を開発する企業としても有名ですが、NVIDIAは自動運転の開発企業でもあります。

 NVIDIAは、自動運転を実現するための開発プラットフォーム「NVIDIA Drive」をリリースし、既に自動車メーカーに提供しています。このNVIDIA Driveを採用しているパートナーには、独アウディ(Audi)や独ダイムラー(Daimler)、独フォルクスワーゲン(Volkswagen)、スウェーデン・ボルボ(Volvo)、米テスラ・モーターズ(Tesla Motors)、トヨタ自動車があります。

 トヨタ自動車はNVIDIAとの業務提携を行っただけで、実際に採用を決めたわけではありません。しかし、デンソーとAIの開発を行い、日本のAIベンチャー企業であるPreferred Networksにも出資している中で、NVIDIAとの業務提携を行ったということは、日本の企業だけで自動運転を実現することは難しいと考えているのかもしれません。

 自動運転に関しては、実現のためにソフトウエアだけではなく、センシング技術や高性能のプロセッサー、高信頼の無線通信など、必要な技術要素の分野があまりにも広すぎるという背景があります。そのため、トヨタ自動車に限らず、世界中の企業がNVIDIAのようなプラットフォームを使って開発を行おうとしているわけです。

Windowsを創ったMicrosoftの再来か

 このまま進むと、こんな将来が想像できます。例えば、個人データ取得の世界的な勝ち組企業であるGAFA〔グーグル(Google)、米アップル(Apple)、フェイスブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)〕の4社のように多くのユーザーを持つ企業が、自動運転車向けのナビゲーションサービスを開発したとします。それがNVIDIAのプラットフォーム上で開発された自動車ならメーカーに関係なく動くとなれば、そのサービスを使えない自動車は、どれほど性能が良くても売れなくなる可能性があるのです。

 1995年に「Windows 95」が登場して以来、多くの個人向けソフトウエアがWindows OS上で動作するようになり、どのメーカーのパソコンもWindows OSを基盤ソフトウエアとして採用しました。その結果、米マイクロソフト(Microsoft)が強い力を持つようになりました。これと同じことが、自動運転の世界で起きるかもしれないのです。

 「歴史は繰り返す」ということを考えると、自動車に多くのソフトウエアが載るようになれば、最も強い力を持つのはNVIDIAのようなプラットフォーマーになるのではないかと私は思います。

 2019年、自動車業界は国境や業界の枠を越えた群雄割拠の時代に突入しようとしています。