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 2020年の最初となる本コラムでは、やはり今年1年がどのような年になるかを予想してみたいと思います。

2019年に最も驚かされたテクノロジー

 2019年にはさまざまなテクノロジーが進化しました。その中でも、私が最も驚いたのが、人工知能(AI)を研究する非営利団体OpenAIが開発したロボットハンドです。

 何がすごいのかといえば、「教師なし学習」、つまり人間の指示なしに5本の指を動かし、6面立体パズル「ルービックキューブ」を人間以上に器用に回していることです。従来のロボットには、どのように動くかを人間があらかじめ教える必要があり、そのためのプログラミングが必要でした。しかも、5本の指を動かすような複雑な動作を人間が数式で表すことは難しい。そのため、従来のロボットは人間ほどの器用な動きはできませんでした。

 ところが、OpenAIは、人間の手を借りずにロボットが自ら学習することで人間以上の動きを実現できることを証明しました。

 OpenAIの成果に限らず、ロボットは今、AIを使うことで大きく進化しています。ロボットは「目」に相当するカメラと「耳」に相当するマイクに加えて、「脳」に相当するAIを手に入れたといえます。

 2019年の技術進化により、ロボットは定型作業から非定型作業までこなせるようになったといえます。これまでも溶接や塗装、包装、ピッキングといった一部の作業はロボットが行ってきました。今後はAIにより、ロボットが担える作業範囲は大きく広がります。どこまで広がるかといえば、カメラで対象の状態を判断し、複数の指を動かして何かを行う作業です。

 そう考えると、人間が行う作業は近い将来ほとんどなくなると言ってよいでしょう。実際に、私の所には高い経験とノウハウを持つ製造業の職人をロボットに置き換えたいという相談がたくさん来ます。つまり、伝統工芸の職人が培ってきた高度な技をロボットで代替する可能性を社会が見いだし始めているといえるでしょう。

ロボットは安く小さくなる

 ロボットは今、急激に安く小さくなっています。ロボットに限らず電気機器を構成する部品は次々とモジュール化され、それらのモジュールの多くは米国や中国の企業が中心となって低コストで大量生産して世界中に供給されています。

 なおかつ、AIによって制御技術が進化し、ハードウエアの性能よりもソフトウエアの制御能力のほうが、ロボットにとって重要になりつつあります。要するに、汎用的な制御基板を使えば、アイデア次第で面白いロボットを安く開発できる時代になりつつあるのです。そのため、汎用的なモジュールで構成された安価で小さいロボットが、今年あたりから世界中のベンチャー企業によって多く生み出されることでしょう。2020年にロボット市場の状況は大きく変わると思います。

 これまで企業が使うロボットといえば、大企業が製造する数千万円単位のものが主流でした。しかし、これからは数十〜数百万円単位のロボットがたくさん出回るようになります。その多くは、インターネットで注文して2〜3日で届くことでしょう。

 これは企業にとって2つの意味があります。1つは、ロボットを自社の工程に容易に導入できること。もう1つは、低価格ロボットという新しい市場ができることです。

 私は、受注が減って困っている中小の製造業はロボットを開発すればよいと思っています。例えば、ある特定の業種の作業を代替するロボットはまだほとんど登場していません。つまり、「ブルーオーシャン」なのです。

 ただし、ロボットを開発する際に重要な要素はハードウエアではなく、ソフトウエアになりつつあることを理解しておかなければなりません。ハードウエアはモジュール化され、AIを載せて、インターネットとつながっていないといけないのです。従って、ブルーオーシャンで儲(もう)けられるのは、新しい技術や知識を必死になって学んだ企業だけです。

 まず、古い考え方を捨てなければなりません。全てを自社で設計しようとする従来の考え方は捨て、開発に時間とコストをかけすぎないようにすべきですし、そのための手法を学ぶべきです。当然、現在のソフトウエア制御の手法やAIも学ぶ必要があり、努力と教育への投資が必要です。ただし、新しいことを全て自分たちだけでこなすのは不可能です。外部の有識者から支援を受けることも必要でしょう。決して楽な道ではありませんが、成功したときのリターンは大きいと思います。