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製造業で「革命」が起こる

 現在、米国では3Dプリンターを使った中小の製造ベンチャーが活気づいています。3Dプリンターも一種のロボットのようなもので、ロボットと同じく非常に安く小さくなっています。数年前は価格が50万円くらいするのが当たり前でしたが、今では5万円程度の3Dプリンターは珍しくありません。

 しかも、2色やフルカラーの3Dプリンターも登場し、光造形の3Dプリンターも10万円程度で手に入ります。素材も、樹脂だけではなく、木や金属、コンクリート、カーボン素材などさまざまなものを扱えるようになってきており、予想をはるかに超えた形で新しい製造業を作り出しています。

 結果的に、現在の米国におけるハードウエアベンチャー企業はファブレス企業が多くなっています。そもそも、「工場」という言葉を定義することが難しい時代になりました。

 あるビルの中にあるおしゃれなオフィス空間に、3Dプリンターが並んで、日々いろいろなものを受注生産している。これがオフィスなのか工場なのかといわれると難しいところです。確かに機械で製品をつくっていますが、見た目は完全にオフィスです。

 どうも我々には、「製造業は大きな工場を構え、多くの従業員によって大きく儲けることができて、地域を活性化させるもの」という固定観念があります。ところが、米国では現在、小さなベンチャー企業が数人でそれなりの規模のビジネスを受注生産で行い、世の中の情勢に合わせてアメーバのように形を変えながら確実に儲けるということを実践しています。こうしたベンチャー企業が数多く集まり、結果的に大きな経済効果を生み出し始めているのではないかと思います。

 今後は大企業でも、臨機応変にさまざまなものを需要に合わせて作るという考え方が必要です。これまでの大量生産から脱却し、求められるものを無駄なく作るのです。そのためには、大企業であっても少量生産を行い、その集合体で大きな利益と安定した経営につなげるという考えが必要です。

 その意味で、2020年は「大規模」を是としてきたこれまでの考え方を捨てるべき年なのだと思います。

伊本貴士(いもと たかし)
伊本貴士(いもと たかし) メディアスケッチ代表取締役 兼 サイバー大学専任講師、AI/IoT評論家 NEC ソフト、フューチャーアーキテクトを経て、メディアスケッチ設立。IoT・人工知能など最新技術のコンサルタントとして企画から、新技術の共同研究開発などを行っている。自社においても、スマート製品や犯罪予測システムなどの人工知能エンジンを研究中。また、経済産業省とIoT 推進ラボが行う地方版 IoT推進ラボのメンターとして、日本全国においてアドバイザーや講演などを行う。 サイバー大学の講師の他、日経BP社「日経 xTECHラーニング」、日本経済新聞社の講師も担当しており、IoTや人工知能、ブロックチェーンの分野における講演多数。 著書に「AIの教科書」(日経BP)、共著に「IoTの教科書」と「IoTの問題集」(共に日経BP)がある。