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 今、「SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)」が、世界中の企業経営者から注目されています。SDGsとは、2015年9月に開催の「国連持続可能な開発サミット」で採決された2030年までの国際目標です。つまり、地球全体でSDGsにある17個の問題を解決しようという共通認識ということになります。

なぜ日本の経営者はSDGsに関心を持つのか

 2019年辺りから、私が講演中に聴衆の方々を見るとSGDsのバッジを付けている人がとても多くなりました。感覚的にですが、経営者の中でも大企業に所属する人の方がSDGsのバッジを付けている確率が高いように思います。政治家やNPO(特定非営利活動法人)がこうした国際的な課題に関心を持つというのは分かりますが、なぜ企業の経営者がSDGsに関心を持つのでしょうか。

 自社の評判を上げるためのCSR(企業の社会的責任)活動の1つと思われがちですが、SDGsに関してはそうは言い切れません。なぜなら、多くの経営者が本業においてこのSDGsの視点や考え方を取り入れなければ、今後企業は成長できないと真剣に考えているからです。

 つまり、ボランティアとして企業の余力でSDGsに貢献しようとしているのではなく、自分たちの主事業でSDGsに対応して社会貢献しなければ、企業として長くは存続できないと考えている経営者が多いということです。

SDGsの17の目標
SDGsの17の目標
(出所:国際連合広報センター)
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共有価値の創造

 実は、この考え方に大きな影響を与えたと思われる有名な経営戦略のフレームワークがあります。マイケル・ポーター氏が提唱した「共有価値の創造(Creating Shared Value;CSV)」です。

 マイケル・ポーター氏は、米ハーバード大学経営大学院教授で、「ファイブフォース分析」や「差別化戦略」などを提唱し、現代の経営理論の世界では長らく第一人者として活躍している人物です。同氏は、共有価値の創造という言葉で、これまでの経営はあまりにも短期的な結果に固執し過ぎており、従来の低コスト・大量生産の考え方は古くなった。これからは、中・長期的な視点も経営戦略に取り入れて社会に貢献した企業が、結果として大きな利益を出すだろうと述べています。

 その理由はいろいろありますが、大きな影響を与えているのはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのサービスです。インターネット上での情報共有が昔に比べて簡単になり、なおかつそれを参考に行動を決める人が多くなったからです。

 例えば、日本ではインターネットで「ブラック企業」というキーワードが飛び交っています。顧客や従業員に不利益を与えているというレッテルを貼られてしまった企業は、中・長期的に見た場合に非常に厳しい状況に追い込まれることでしょう。この例から分かる通り、ボランティア活動に積極的かどうか以前に、企業は普段行っている全ての活動に対して、社会との関わり方や貢献度が人々から常に監視されているのです。そして、その結果が短期間で広く社会に認知され、企業に対する評価そのものに直結するという時代を迎えているわけです。

 これまで数々の経営環境の変化に関する予想を当ててきたマイケル・ポーター氏の言葉ですから、大企業の経営者が無視できるはずはありません。そう考えると、日本の大企業の経営者が、企業におけるあらゆる業務において社会貢献を意識することは自然の成り行きであり、これは結果として社会にとって非常に良いことだと思います。

 とはいえ、何もベースがない状態でどのように社会貢献できるかを考えることは簡単ではありません。そこで注目されているのがSDGsなのです。SDGsは、国境のない国際的な課題です。これからの日本企業は日本国内だけでビジネスを行うのはますます難しくなり、もっと世界へ出て行かなければならなくなります。こうした状況において、国際的な課題を解決するというのは、非常に良いシナリオになります。世界共通の課題であるため、その活動に対して反対の立場を取る人は少ない上に、グローバルに注目を集めるというメリットもあります。

 世界の投資家は単にもうけるだけではなく、結果的にどれくらい社会を良くできるかを重視する傾向を強めてきました。そのため、SDGsの課題解決を掲げる企業はさまざまな側面から支援を受けられる可能性が高まっているのです。

 こうした理由から、日本の経営者はSDGsに非常に関心が高いわけです。