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 2021年2月9日にデジタル庁のデジタル改革関連法案が閣議決定され、9月に予定されているデジタル庁(仮称)の創設まで、いよいよ半年ほどに迫ってきた。それに合わせて、来年度(2021年度)は地方自治体においてDX(デジタル変革)を推進する動きが加速している。自治体の内部でDXを推進すると同時に、新型コロナウイルス禍における企業の変革を加速させるために、企業へのDX推進に関するサポートも手厚くなる見通しだ。教育支援や補助金なども厚くなるだろう。

 一方で、さまざまなところでDX推進に対して戸惑いの声も聞こえてくる。

(出所:PIXTA)
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そもそもDXとは何なのか

 こうした声が上がる大きな原因の1つに、DXという言葉の曖昧さが挙げられる。確かに、DXには明確な定義はなく、報じるメディアによっても意味が微妙に異なっている。その意味では、DXは厄介な言葉でもある。一般には、「紙などの手作業をデジタル化すること」と「データ分析を行うこと」の2つの意味で使われているようだ。こうした背景から、「DX推進」という言葉だけを掲げた状態では、まず何を目指し、何から始めればよいのかといった計画を立てにくいと感じる自治体や企業が多いように思われる。

 DXに関する提唱で有名なエリック・ストルターマン氏は、論文「Information Technology and The Good Life 」において、DXはデジタル技術を活用してムダな時間を削り、良い人生を送るために行うのであって、デジタル技術に振り回されてはいけないと提言している。

DXを始める前にすべきこと

 つまり、PRを目的に闇雲にデジタル化を推進するのではなく、「一体、自分たちの問題点や時間のムダはどこにあるのか」を洗い出し、それを改善する1つの方法としてデジタル化を実施すべきだ。決して、デジタル化することが目的となってはいけない。それこそ、逆にデジタル技術に振り回されるだけの結果となる。

 一部の自治体や企業の担当者は、デジタル化やテレワークへの切り替え目標のパーセンテージだけを各部署に通達しているようだ。だが、そうした進め方を行うと現場は混乱し、戸惑うばかりとなる。

 デジタル化推進においても、最初に行わなければならないのは、自分たちの問題点の洗い出しと業務フローの見直しだ。こうすることで最も重要な問題点が明確になれば、それを解決するためにデジタル技術をどのように活用すればよいかを考える。こうした進め方を勧める。

 例えば、電話応対に多くの時間を割かれているのであれば、人工知能(AI)を活用した自動応答システム「チャットボット」を導入し、簡単な質問に関してはそちらに誘導すればよい。操作方法の問い合わせが多いのであれば、説明動画を公開して問い合わせの数を減らす。紙の申請対応に多くの時間がかかっているのであれば、インターネットで受け付けるようにすればよいだけだ。

 問題を整理せずに、何でもデジタル化しようとするのは、地図を持たずに山に登ろうとするのと同じで、高い確率で遭難してしまう。そして、登るように指示された人は、どこをどう進んでよいのか分からず、立ち止まって戸惑う……。これが今の自治体や企業の典型的な姿なのではないか。