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 現在の生産を維持することはもちろん、市場の要請に応えつつ、会社の経営にも貢献する。そのために継続的な改善活動を続けるのが、強い工場の姿だ。日常の小さな生産現場の改善から、年度計画や大きなテーマを掲げた俯瞰した改善まで、さまざまな改善が行われる中で、多くの改善案が生み出される。改善活動は常に「費用対効果(すなわち投資効果)」によって成否を評価される。改善案の実行に必要な費用の方が大きくなる場合、その案はボツになることもある。また、現在の技術では実行不可能な改善案や、他の問題とのトレードオフになる改善案、あるいは、顧客の了解を得ることが難しい改善案などは、費用対効果以外の理由で改善案がボツになることも少なくない。

 一方で、あらゆる改善案は、従業員の創意工夫のアウトプットであり、貴重な時間や貴重な知識、貴重な経験など、経営資源を使って生み出されたものだ。ボツになった改善案の放置は経営資源をムダにすることと同じである。

強い工場づくりのポイント

 人の動きに着目して作業改善を行うことや、動作のムダを徹底して削いでいく取り組みは、強い工場として必要不可欠だ。設備を効率良く動かすために、稼働の低下要因を徹底して撲滅する活動などもしかりである。もっと俯瞰した立場から、製造現場のみならず管理・間接部門に対して、仕事の整理整頓を行う。すなわち、業務そのもののムダを排する取り組みを実施することも、強い工場になるためには重要である。

 ところが、ムダを減らすことに真摯に向き合っている会社でも「知識やアイデアをムダにしない」という視点まで持ち合わせている工場は少ない。確かに、全ての改善案を実施するわけにはいかない。「いつ、どのように活用するか」をしっかりと議論する必用がある。だが、誰かが考え出した改善案には、必ず経営資源としての価値がある。従って、改善案自体を捨て去ることは、「お金を出して買った極めて高価な原材料を使わないまま捨ててしまうことと同じだ」という視点を持つべきだ。この視点を持てば、改善力は一段と進化する。

 強い工場とは、1円でも拾えるものは拾う工場であると同時に、どんな改善案でもムダにはしない工場だ。経営者や管理監督者は、自らの工場が従業員の知識や経験の結晶である改善案をムダにしていないか、ぜひ現状を見直してほしい。