次のような質問が私の事務所に寄せられました。
【質問21】

國井設計塾予備校の「技術者向けコミュニケプレゼンスキルアップ」を学び、日々実践しています。話ベタの私には、とても役に立っています。第19回と第20回で、設計者としての偏差値に当たる「技術コンピテンシー」を自己診断テストで把握しました。残念ながら、結果は、コストと設計書、材料、加工知識がメタメタの点数(コンピテンシー)でした。今後1年間の目標はこれらのコンピテンシー項目の強化だと思いました。次の「修行」は、どのようなものですか? 差支えがなければ教えてください。
この質問に対する私の回答はこうです。
【回答21】
その答えは、「あなたを取り巻く関連部門の役割」を理解することです。確かに、世間では「巨匠」や「匠の技」など匠(たくみ)という単語を使います。でも、あなたは技を持つ1人の職人を「匠」だと思い込んでいませんか? それは大きな間違いですよ。IPS細胞でノーベル賞を獲得した京都大学教授の山中伸弥氏も、“神の手”を持つ脳外科医も、F1レーサーのアイルトン・セナも、全てチーム活動で成果を得ているのです。技術者向けコミュニケーション力を身に付けたら、それを応用して「関連部門の役割」を理解しましょう。そこには、教科書や参考書は存在しません。前述のコミュニケーション力があなたを支援してくれるはずです。
國井設計塾予備校の第1回から第17回までは、設計者を取り巻く人々とコミュニケーションするために必須となる「技術者向けコミュニケーションとプレゼンテーションのスキル」を学びました。 ここからは、技術者向けのコミュニケーションではなく、具体的に「設計者を取り巻く人々や部門の役割」について解説していきましょう。
福井県鯖江市にみる「産地内分業」
鯖江(さばえ)と言えば、誰でも知っている世界的に有名な眼鏡フレームの生産地です。その公式ホームページをクリックすると、いきなり飛び出してくる単語が「産地内分業」です。この先、もうこのコラムを読まなくても済んでしまうほどのインパクトがある単語ですね。
ここで図1を見てみましょう。通常、眼鏡フレームの生産工程は200以上ありますが、金属フレームと樹脂フレームの共に代表的な工程をイラストにしました(だだし、レンズは除く。國井技術士設計事務所の作図)。
図1における「デザイン職」が設計者に相当します。その他、眼鏡の製造工程の例では漏れてしまう、一般企業における各種の部門を以下に示します。まずは、大企業の場合です。
- [1]研究
- [2]企画
- [3]技術開発センター
- [4]設計
- [5]調達/購買/資材
- [6]試作
- [7]製造
- [8]受入れ検査/出荷検査
- [9]品質管理
- [10]物流
- [11]営業/営業技術
- [12]保守/保全
- [13]クレーム処理/お客様窓口
- [14]リサイクル
- [15]特許
- [16]広報
- [17]人事
- [18]総務
- [19]教育
- [20]守衛
- [21]調査部
- [22]経理
- [23]原価管理