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設計者の3次元CADは大工ののこぎりとかんな

 かつて、「お金(予算)がないから、3次元CADは導入できない」という企業が数多く存在する時代がありました。当時としては仕方のない面がありました。3次元CAD自体も発展途上で優れものとは言えませんでした。むしろ、2次元を3次元に表現させるための情報を大量にインプットする必要があり、設計者を困惑させていました。この作業をモデリング(造形)と言います。

 しかし今、そうした言い訳は通用しません。3次元CADが廉価になり、どのベンダーを選択してもはずれはありません。モデリング作業も簡単になっています。筆者が住む埼玉県川口市内の5人しかいないある零細企業でも、3台の3次元CADが活躍しています。

 世界に目を転じると、韓国の大企業では3次元CADを利用した「完全図面レス」が始動しています。このシステムがその企業の全事業に展開されたとき、日本企業の息の根が止まるのではないかとすら筆者は心配しています。いまさら3次元CADを導入すべきか否かと悩む時代ではないのです。

 一方、既に3次元CADを導入している企業も大きな課題を抱えています。それは、以下の2点です。

[1]設計者ではない3次元モデラーの増加
[2]CAEを未活用

 新人設計者のあなたが卒業した学校にも同じことが言えます。工業高校、高等専門学校、大学、大学院──。学歴に関係なく、3次元CADを扱えないまま卒業したとしたら、それは大変な“事件”です。製図の授業にケント紙とドラフターを使っている学校や、方眼紙と三角定規を使っている学校…。これでは、日本企業がどれほど頑張ってもグローバルでは戦えません。

 ただし、もしもそうだったとしても学校を非難する前に、英会話などと同様に、自らの意思で3次元CADを学ぶべきです。自己投資を惜しまないでください。

事例で知るCAE(コンピュータシミュレーション)

 普段、私たちが何気なく手にしている清涼飲料水やビールの容器に使用されているアルミニウム合金製缶(以下、アルミ缶)。そのCAEの結果がです。次のことが分かります。

・アルミ缶の座屈解析に関して、この容器の耐圧性は、単純な円筒形状と比較して6倍以上もある。
・円筒形状では、底板の凹み変形が最も弱い座屈モードだが、缶ビールなどのアルミ缶は底板部が曲面で強化されており、初めに現れるのは円筒面の花びら状の座屈モードである。

図●缶ビールの耐圧性能に関するCAEの例(出所:構造計算テクノロジー)
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図●缶ビールの耐圧性能に関するCAEの例(出所:構造計算テクノロジー)

 新人設計者のうちから、このレベルのCAEを実施できること、つまり、設計ツールを使いこなせることが肝要です。なぜなら、ビール容器底面の凹部を最適な形状に設計できなければ、炎天下のビーチに置かれる缶ビールや、-20℃の冷凍室で急冷される缶ビールの容器が簡単に破裂してしまうからです。

 破裂しない容器を設計するとき、試行錯誤を繰り返していれば、恐らく半年以上も実験を続けることになるでしょう。アルミ缶の現物を使った分析は非常に困難です。コンピューター、および有限要素法というソフトウエアがあって初めて解析できるのです。

 筆者の事務所のクライアント企業は、設計審査において必ずCAEの結果を求めます。ということは、CAEが実行できなければ、設計審査も受けられない設計者と判断されてしまいます。ただし、CAEのプロになる必要はありません。複雑なCAEは有料でプロに委ねればよいのです。

 一度、あなたの会社に存在する設計ツールをオールリセットし、必要最小限の設計ツールを再選択してみましょう。これが、設計の効率化の第一歩です。