次のような質問が私の事務所に寄せられました。
【質問26】

先日、会社の先輩に「ポンチ絵を描いて構想設計の説明をしろ」と言われました。子供の頃、フルーツポンチというデザートを食べたことはありますが、設計業務で使う「ポンチ絵」とは一体何のことでしょうか? ちなみに私は高専卒ですが、少なくとも、ポンチ絵という単語は習っていないような気がします。ご教授をお願いします。
この質問に対する私の回答はこうです。
【回答26】
あなたの先輩が「ポンチ絵」を要求することは、決して間違った要求ではないと思います。しかし、当事務所のクライアントには「ポンチ絵」の作成を控えてもらっています。なぜなら、3次元CADやCAE(コンピューター・シミュレーション)が浸透している職場で、今どきポンチ絵とは時代錯誤もはなはだしいからです。ポンチ絵を使うことは、いうなれば、火打ち石で火を起こすようなもの。もっと言えば、デジタル放送をわざわざアナログに変換して、ブラウン管でテレビ放送を見るようなものです。
ポンチ絵とは、「B」や「2B」などの鉛筆を使って、設計者の頭の中にある構想や形状を紙にスケッチしたものです。その多くは遠近法による立体図で、これを描いていた昔の設計者には美術や絵心が必要でした。昔なつかしい「ドラフター(製図板)」や2次元CADを使用している企業なら、ポンチ絵を描いて構想を練ることは、現在も設計の常道かも知れません。しかし、それは昭和の設計者のスタイルです。
間違いだらけ:ポンチ絵は昭和の設計者
図1は、その昔、私が描いた高速レーザープリンター用の熱対策安全カバーのポンチ絵です。先輩の指導の下で描きました。
図1を基に、代表的な箇所に詳細な寸法を入れていきます。必要ならば、材料や板厚、各種の公差も記入します。それが図2です。
これらのポンチ絵を使って上司に設計方針を説明し、承認が得られるとドラフターに向かって構想設計に入ります。構想設計が承認されると部品図や組立図を起こします。
高価な3次元CADを使いこなそう!
貴社が今だにドラフターや2次元CADを使用しているのであれば、ポンチ絵を描くことも仕方ありません。しかし、高価な3次元CADを使用している企業であれば、図3に示すように3次元CADを活用しましょう。
この場合、ポンチ絵ではなく「概略構想図」と言います。せっかく高価な予算で所有している3次元CADなのですから、構想段階から有効活用しましょう。