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國井 良昌
國井 良昌
國井技術士設計事務所 所長

 次のような質問が私の事務所に寄せられました。

【質問】

 日本は少子化や人口減で人手不足です。しかも、隣国は経済が不安定で、その隣国から成績優秀な学生や転職者が日本企業に続々と就職しています。私は学生時代、「アルバイト三昧」でした。友人は女性の後を追ってばかり。つまり、私も友人も全然勉強していませんでした。そして、就職の時期を迎え、前述の海外からの優秀な学生達と共に現在の企業へ就職しました。では、その優秀な彼らの仕事ぶりはどうかというと、正直そんなに優秀とは思いません。確かに語学力はすごいと思いますけど。それは一体、なぜでしょうか? 先生はどう思いますか?

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】

 これはちょっと困った質問ですね。「ハイ、それでは、回答しましょう!」とはいきません。しかし、優秀な留学生の話も含め、当事務所のクライアント企業で外国人、特に東南アジア系の優秀な学生や技術者を積極的に採用している総合電機企業があるので、その企業の経験を紹介しましょう。

 日本経済は、「失われた20年」と呼ばれる低迷から脱出し、経済復活のための「アベノミクス」が誕生して、徐々に活気付いてきました。急激とは言いませんが、穏やかなカーブを描いて、日本経済は上昇気流と言えるでしょう。少なくとも2020年のオリンピック開催までは。

 過去を振り返ると、日本経済が上向くと相反して隣国の経済が低迷します。そこで、質問にも記載があったように、幾つかの日本企業は、隣国の優秀な学生や技術者を採用するようになったのです。

外国人技術者が日本で初めて覚える言葉って何?

 筆者が知っている前述の理由で日本へ来た外国人は、3カ国語が堪能です。それは、母国語と英語、日本語です。日本語は日本国内で学んだわけではなく、母国で習ったので、日本の慣習や独特な言い回しはほとんど習得しません。

 ではここで、皆さんに質問です。

 日本企業に就職した優秀な外国人技術者が、初めて覚える言葉は何だと思いますか? 「おはようございます」や「お先に失礼します」や「いただきます」などの日常の挨拶レベルの文言は除きます。さて、何でしょうか。

 答えは、「仕方がない」と「しょうがない」でした。無理やり英訳すれば「It can’t be helped.」や「That’s life.」なのかもしれませんが、日本特有のニュアンスを含んでの英訳はできないと思います。

 それはまるで、肩こりと同じです。外国人に肩こりはないそうです。なぜなら、その単語がないからです。しかし、日本人が外国人に肩こりを詳細に説明すると、どの国の人も肩こりになってしまうそうです。

 それはまるで、幸福と同じです。モンゴルに出向いた日本人記者が、モンゴル高原に住む遊牧民の村長に質問しました。「皆さんは幸福ですか?」と。すると、村長は答えました。「幸福って何ですか?」。その記者は、一生懸命に幸福を村長に説明しました。「幸福とは、不幸な人が存在しており、その人の生活のワンシーンごとを捉えて、1つひとつ比較して測る個人の満足感です」。 すると、村長が大笑い。「この村では比較する人がいません」と。それを聞いた日本人記者は、大きく落ち込んでしまったそうです。

 「今日は残業してくれ」「しょうがないなぁ」、「悪いけど、明日深センへ出張してくれないか」「仕方がない、行くか」などなど──。さまざまな場面で使われてきました。「セクハラ」や「パワハラ」、「ブラック企業」、「働き方改革」などの単語が生まれるまで、良し悪しは別として「仕方がない」や「しょうがない」という言葉は、日本企業にとってとても便利な言葉でしたね。