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トレードオフに関する自社の絵辞書作成を推進

 前回、トラブル三兄弟は毎日使う単語でないため、形骸化やマンネリ化する場合があると述べました。そこで、前回の新規技術と同じく、トレードオフでも「絵辞書」の作成を進めます(図2)。自社で経験したトラブルの絵辞書をぜひ、作ってみてください。さらに、この絵辞書の形骸化を防ぐために、絵を6カ月ごとに更新します。ある企業では、更新の際に選ばれた絵の提供者に、金一封、3万円を支給しています。設計者のモチベーションを高める1つの仕掛けです。

図2●トレードオフの絵辞書
図2●トレードオフの絵辞書
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トレードオフがないFMEAは「百害あって一利なし」

 トラブルを未然防止するための設計ツールは、世界にたった1つしかありません。それがFMEAです。ところが、日本企業にはさまざまな種類のFMEAがあります。この中で、筆者の事務所のクライアント企業を大いに悩ませているのが、トレードオフが原因のトラブルを抽出する概念がないFMEA(トレードオフがないFMEA)です

 なぜでしょうか。それは、多くの日本企業に「設計書」がないからです。設計書とは、「使用目的の明確化」と「設計思想の優先順位」に関する設計者の意図を明文化したものす。「机上試作」とも言われています。この「設計思想の優先順位」がトレードオフに相当します。この重要な設計概念がないのは致命的です。これでは、いつまでたっても社告・リコールが収束しません。いや、むしろ増加してしまいます。

 本コラムの第14回「スカウトされない日本人設計者(分析された日本企業の弱点)」を復習してください。

 妙薬も選択ミスや使用ミスがあれば、「百害あって一利なし」。FMEAも同じです。自社に最適なFMEAを選択してください。そして、選択したら、腕利きの技術者(技術職人)が持つ必須の技「匠のワザ」を磨いてから活用しましょう。それが、優秀な設計者や設計マネージャーへの正道です。そして、そのワザの1つがトラブル原因の98%が潜在しているトラブル三兄弟なのです。

 次回は、トラブル三兄弟のうち、3つめの「変更」を学びましょう。ご期待ください。