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安全率とは

 本コラムではこれまで「5N企業」について何度か触れてきました。5つの「ない」企業のことです。

 5N企業に触れたコラムのうち、第24回の「コンサルタントは『5N企業』からは受注しない」の項目に、「強度、安全率、累積公差計算しない(できない)」という文言があります。「しない」がいつの間にか「できない」になってしまった企業も少なくありません。これが、一部の日本企業の実態です。こうした5N企業が、設計審査(DR)や故障モード影響解析(FMEA)の充実化、3次元CADによる設計の効率化、さらにIoT(Internet of Things)や人工知能(AI)といった時代の先端用語を並べているのはとても矛盾しています。

 エレクトロニクス系技術者は安全率を「ディレーティング」と言いますが、5N企業ではなんと、この安全率を計算していないのです。その証拠に、設計審査やFMEA審査において安全率に関して全く説明がなく、質問もないのです。これでも設計審査でしょうか?

 図3は安全率の概念図です。

図3●安全率の概念
図3●安全率の概念
(出所:國井技術士設計事務所)
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 機械材料などを学ぶと、教科書に安全率について載っているものの、その分量は半ページか、せいぜい1ページしかありません。しかも、材料の電子顕微鏡写真や各種の特性程度しか説明がないのです。材料原価に関しては最悪な状況で、「高い、安い」の表記しかありません。学者やセミナー講師はこれでよいのかもしれませんが、私のような設計職人は、これでは飯が食えません。

 まず安全率は、図3を参照してください。これは、使用条件や品質のばらつきを補うものであり「破壊に対する安全率」と「変形に対する安全率」が存在します。

 一方、機械材料はQ(Quality:品質)、C(Cost:コスト)、D(Delivery:期日)、Pa(Patent:特許)、つまり、私の事務所が推進している「技術者の4科目(QCDPa)」を学ぶべきです。材料原価は「高い、安い」ではなく、「円」で把握できて初めて設計職人といえるでしょう。

 安全率や機械材料のQCDPaについては、いずれこのコラムで取り上げたいと思います。ご期待ください。

國井 良昌(くにい よしまさ)
國井技術士設計事務所 所長
國井 良昌(くにい よしまさ) 1978年、横浜国立大学工学部機械工学科卒業。日立製作所および富士ゼロックスにて、高速レーザープリンターの設計に従事。富士ゼロックスでは、設計プロセス改革や設計審査長も務めた。1999年、國井技術士設計事務所を設立。設計コンサルタント、セミナー講師、大学非常勤講師として活動中。「ついてきなぁ!加工知識と設計見積り力で『即戦力』」(日刊工業新聞社)など、著書多数あり。技術士(機械部門:機械設計/設計工学)
日本技術士会 機械部会
横浜国立大学 大学院工学研究院 非常勤講師
首都大学東京 大学院理工学研究科 非常勤講師
山梨大学工学部 非常勤講師
山梨県工業技術センター客員研究員
高度職業能力開発促進センター運営協議会専門部会委員A