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【質問】
 國井先生のセミナーで、韓国の大企業に「図面レス」に関するコンサルテーションを実施したと伺いました。恥ずかしい話ですが、弊社はいまだに「2次元CAD」を使用しており、設計審査では「ポンチ絵」を使用した、審査ではない技術説明会を実施しています。その結果、議事録には「承認」しかありません。先生には大変痛いところを突かれてしまいました。恥ずかしいついでに、もう1つ質問があります。今月末の出図をうまくこなすために、簡単で要領よくこなせる検図の方法を教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 あれ? どこかで聞いたような質問ですね。本コラム第47回で「ただ、少々虫がいい話であることは覚悟の上で、教えてください。お客様に緊急に対処できるワザは存在しますか? 手抜きではなく、あくまでもお客様への緊急対応のためです」と質問されました。今回も、聞きたいことは楽な方法ということですね。

 手抜きの料理同様、設計も手を抜けば相応のしっぺ返しがくることは肝に銘じておいてください。まさか「手抜きの検図の仕方」を聞きたいわけではないですよね? そうではないことを願いながら、「検図の極意」を解説しましょう。

肉を切らせて骨を断つとは

 検図の極意とは、ズバリ「肉を切らせて骨を断つ!」です。まずは、少々不気味な響きのこの言葉の解説から入りましょう。これは、日本の侍の戦いを表現したものです。武道では、レベルの低い者と高い者との戦いは全く勝負になりません。これに対し、レベルの高い者同士の戦いは、どちらが勝ってもおかしくなく、見物中のやじ馬が思わず目を閉じてしまうような緊迫した戦いだったと言われています。

 また、武道では勝負をつけるためにワザをかける瞬間に隙が生まれ、不安定となる傾向があります。これは他の格闘技やスポーツでも同じです。例えば、レスリングや柔道の試合で、いつまでも消極的に相手の選手と組んでいると減点対象となります。そう、ワザを掛けにいくのが怖いから消極的な試合となるのです。

 侍の戦いでも、いつまでもにらみ合っていたのでは勝負がつきません。ワザを掛けると見せかけ、自分の腕の肉をあえて相手に切らせて、代わりに相手の腕を落とす。これが武道の真髄である「肉を切らせて骨を断つ!」の意味です。

 検図の話に戻りましょう。検図における「肉」とは、顧客に謝って済むレベルの図面ミスのことです。一方、「骨」とは顧客に謝っても済まないレベルの図面ミスを意味します。では、必要なワザとはどのようなものでしょうか。

トラブル三兄弟の「変更」に注目

 それは、匠のワザ[1]の「トラブル三兄弟」です。本コラムの第37回でも紹介しました(図1)。覚えているでしょうか。

(1)新規技術
(2)トレードオフ
(3)変更

 トラブルの98%はこれら3つの中に潜んでいます。これは学問ではなくて職人のノウハウです。中でも、注意を要するのは(3)の変更です。

図1●トラブルの98%が集中するトラブル三兄弟
図1●トラブルの98%が集中するトラブル三兄弟
(出所:國井技術士設計事務所)
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 では、この変更が検図とどのような関係があるのでしょうか。図2は本コラム第39回で掲載したトラブル三兄弟に関する件数の分析(左側)と、その損失金額の分析(右側)です。ちなみに、このデータは当事務所のクライアント企業の協力を得て作成しました。

 右側の円グラフ(損失金額の分析)を見ると、「変更」が損失金額の原因の50%を超えていることが分かります。なお、損失額の中には命の値段も含まれています。ショックですね。

図2●トラブル三兄弟に関する件数の分析(左)と損失金額の分析(右)
図2●トラブル三兄弟に関する件数の分析(左)と損失金額の分析(右)
(出所:國井技術士設計事務所)
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 先に、検図における「肉」とは謝れば許してもらえる図面ミスと言いました。これは「新規」と「トレードオフ」に相当します。一方、「骨」とは、顧客に謝っても済まないレベルの図面ミスのことで、これが「変更」に当たります。