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【質問】
 國井先生に相談です。弊社に「時間がないからCAE(コンピューターを使ったシミュレーション)ができない」とか「時間がないから検図ができない」などと本末転倒の文句を言う若手設計者がいます。昔なら鉄拳が下されたと聞きましたが、そんなことをしたら今は訴えられる時代です。今後、どのように彼らを指導したらよいでしょうか。ご教授をお願いします。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 そうした文句はまさしく本末転倒ですね。私が勤務した最初の企業は厳格なイメージの企業でした。そのせいか、そんな文句を口にする技術者は皆無でした。しかし、転職した2社目の企業は、少々柔軟なイメージの企業だったからでしょうか。時間がなくてできないと言う技術者が多少存在していました。私の部下にもいて、「どうしてこんな人を採用したのか」と、人事部を恨んだことも何度かありました。従って、そうした発言をするのは、その企業独特の風土が原因かもしれません。そう考えると、その風土を生んだのは、その企業の先人たちということになりますね。

 さて、質問は「どのように指導したらよいですか」とのこと。これまでに解説してきた匠のワザ[1]~[6]の中から最適な対策手段を選択しましょう。そう、匠のワザ[5]です。それは、「現象ではなく原因に打て!」という対策です。つまり、本末転倒な言い訳をする現象に対策を打つのではなく、そうした風土を長年かけて築き上げてしまった原因を追究し、そこに対策を打つのです。続いて、判明した原因に対して、匠のワザ[3]と匠のワザ[4]、つまり、「4+1」を施します。

匠のワザと「4+1」が分からない場合は復習

 初めて本コラムを読む人はチンプンカンプンですよね。そこで、少々時間がかかると思いますが、本コラムの第40~49回をじっくり読んでください。もしくは、書籍『ライバルを打ち負かす設計指南書 攻めの設計戦略』(日経BP)の第3章を熟読し、前述の匠のワザ[1]~[6]や「4+1」を理解してください。設計実務に必携ですよ。

設計コンサルタントと設計改革

 私の事務所のホームページには、無料の質問コーナーが設置されています。今回の質問者の質問欄には電話番号が記載されていましたので、こちらから電話し、面談を重ねて悩みの神髄を把握しました。

 悩みの神髄とは「CAE」でも「検図」でもなく、長年続いてきたその企業の悪しき慣習を排除することでした。それは、「設計改革」です。今の日本企業の悩みは、経営改革でも、調達改革でも、生産改革でも、物流改革でもありません。設計改革だと私はみています。しかし困ったことに、肝心のこの設計改革ができないのです。できる人材が不在なのです。そこで私の事務所では、この企業とコンサルタント契約を締結し、現在、「年」単位で設計改革を実施中です。この先は自慢話になるのでやめておきましょう。

命をつなぐサバイバル検図の極意

 質問者の文面に「時間がないから検図ができない」と書いてありました。そこで、今回は「命をつなぐサバイバル検図の極意」というテーマを取り上げてみます。物騒に聞こえるかもしれませんが、まあお付き合いください。

 皆さんが乗船している船が沈没し、ボートで漂流してやっとのことで南の無人島に到着したとします。遠方を通過する貨物船や上空を通過する航空機に発見してもらうまで、何とか1日1日を大切に生き延びる必要があります。では、無人島にたどり着いた人間にとって、生き延びるための必須アイテムとは何でしょうか? 水? 甘い、甘い。実に甘いですよ。

 正解は、靴です。次に衣服だそうです。なぜなら、命の水を探す間に素足を切ってしまえば、そこから破傷風菌が入って呼吸困難から死に至る可能性があるからです。衣服がない場合も同様です。

 さて、検図におけるサバイバルなアイテム、つまり「サバイバル検図」とは、私の事務所がクライアント企業に伝授している検図のワザです。ただし、あらかじめ注意しておかなければなりません。サバイバル検図は、実施しても本当の検図を行ったことにはなりません。また、本当の検図の足元にも及びません。しかし、「死に至る」ことは防げます。設計者としての最後の命も守ってくれます。