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【質問】
 國井先生の検図のセミナーを受講しました。その講義の終盤にグループ実習がありました。製図法の知識の不足や寸法漏れ、不適切な公差や材料の選定ミスなどに関し、多くのグループが検図教育や「チェックリスト」の作成、相互検図などの対策案を発表しました。その際に先生は、「韓国の大企業ではそんな図面ミスはほぼありません。従って、対策不要です」と言われました。その理由をもう一度教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 私の事務所は、韓国の大企業にも指導しています。その企業は全ての部門ではありませんが、2013年1月2日から「完全図面レス」となりました。韓国はキャッシュレス化が世界一進んでいるといわれています。従って、その企業の完全図面レスへの意欲的なチャレンジも容易に想像できました。そして、私の事務所がその完全図面レスへの道を切り開く一翼を担ったことを誇りに思っています。ではこの後、その企業を題材にどのように完全図面レスにしていったのかを説明します。

メンバーは全て業務指名制

 まずは、本コラムの第7回と第48回を読んでください。そこに、韓国の大企業の複数部門とコンサルテーション契約している私の事務所からの情報を記載しました。

[1]1つの開発プロジェクトのメンバーは全て指名制である(業務指名制)。

[2]従って、自己検図や組織検図ができない設計者は指名されない。

[3]製図法知識の不足や寸法漏れ、公差漏れなどあるはずがない。

 毎年1月2日と3日に行われる「箱根駅伝」を例に取ってみましょう。箱根駅伝には往路と復路を合わせて10区あるので、選手の数は、10人の正選手(出走選手)と6人の補欠選手で、1チーム16人以内と規定されています。「参加することに意義がある」というのはスポーツの素晴らしい精神ですが、それだけでは世の中で認められません。監督を含む彼らの1番の目標は「優勝校」となることです。そして、箱根駅伝こそ、優勝校以外は全く注目されない代表的な競技ではないでしょうか?

 例えば、皆さんが箱根駅伝を目指す大学の4年生で、チームのキャプテンだとします。最終学年でキャプテンを務めていて、出走選手を追い掛けて水の入ったペットボトルを手渡す役を目標にしますか。もちろん、その役が大切なことは言うまでもありません。しかし、まず目標とするのは選手として選ばれて、優勝することですよね。選ばれることが指名制という実力の世界です。

 しかし、このとき指名する側も大変です。指名ミスをしてしまった監督は厳しい立場に立たされます。皆さんは今年の箱根駅伝の優勝校と第2位、第3位の監督の名前を言えますか。恐らく、青山学院大学陸上部の原普監督しか覚えていないのではないでしょうか。

 韓国の大企業では、開発プロジェクトの部長は役員会議で指名されます。これが原監督に相当します。ここから、出走選手を設計者や各部門の技術者に置き換えてみてください。このとき、自己検図や組織検図ができない設計者や、寸法抜けをやらかす設計者が指名されるはずがありません。なぜなら、韓国の大企業ではそこで失敗してしまった部長は、2度と大役を任せてもらえないのですから。

 本コラムの第7回を読んでくれましたか。次に示す図1を見て、あなたはどう思いましたか?

図1●やる気のない日本人技術者は後部両端席に座る
図1●やる気のない日本人技術者は後部両端席に座る
(出所:國井技術士設計事務所)
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