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【質問】
 実は遅ればせながら、弊社は「完全図面レス」を検討中です。いろいろな企業機密があるかと思いますが、差し支えのない範囲で完全図面レスを紹介してください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】
 私の事務所が韓国企業とコンサルテーション契約を締結してから今年の4月で丸9年がたちました。完全図面レスの話をする前に、まずは、現地での飲み会などで韓国の技術者が語った日本企業や日本の技術者に対する驚きや違和感を知ってください。

 早速ですが、韓国の技術者が日本の企業や技術者について語ったことを列記してみます。

  • (1)毎朝の始業前のラジオ体操に違和感がある。
  • (2)宿泊付き研修所で起床時刻に廊下でチャイムや音楽が流れることに違和感がある(自主性は?)。
  • (3)社員食堂と幹部食道の区別がない(幹部の権威がない)。
  • (4)昼間と定時後の職場の雰囲気が違う。
  • (5)しょうがない、仕方がないという日本語は訳せない。
  • (6)いまだに現金主義(キャッシュレスの時代)
  • (7)電車やバスのシルバーシートに若者が堂々と座っている。
  • (8)英語や中国語、韓国語を社内や街中で話すと振り向かれる。
  • (9)会議の連続(リーダー不在でなかなか決まらない)。
  • (10)会社や上司への悪口が多い。
  • (11)いまだにブレーンスト―ミングで発案。
  • (12)いまだにQ(Quality、品質)の一本やり。
  • (13)C(Cost;コスト)もD(Delivery;期日)も無関心。
  • (14)なんと、Pa(Patent;特許)にも無関心。
  • (15)「なぜなぜ」は、まるで仙人のよう。
  • (16)上司は優先順位を示さない。相談すると全てが重要と言う。
  • (17)いまだに生産現場にある「5S」ポスターに驚く。
  • (18)「ポンチ絵」って何?
  • (19)設計書がなくてどうして設計審査ができるの?
  • (20)プレゼンが下手。何を主張したいのか伝わらない。
  • (21)設計審査がまるで「お通夜」のように静か。
  • (22)いまだに紙の図面を描いている。
  • (23)いまだに検図。
  • (24)いまだに「設計の意図する図面を描こう」と上司が言う。
  • (25)その上司が図面を描けない。検図もできない。

 韓国の技術者が語ったことをありのままに書いてみました。皆さんもある程度は想像できるのではないかと思います。

完全図面レス化への移行のきっかけは意外にあっさり

 この韓国企業では、2013年の1月2日から、一部の商品ですが「完全図面レス」が開始されました。図面レスを推進したのは、同企業の3人の社員と、4人の設計コンサルタント(米国人とフランス人、2人の日本人、その内の1人が私)の合計7人です。コンサルタント間での名刺交換と飲み会は契約書で禁止されていましたが、図面レスを推進する3人の社員とはすぐに仲良くなりました。

 完全図面レスへの移行理由や経緯などを紹介しましょう。第55回コラムの質問者の勤務先企業では、以下の3つを「検図」と称しており、上司も何の疑問も抱かないとのことでした。

  1. JIS製図法の知識不足や寸法抜け、不適切な公差、不適切な材料選択のチェック。
  2. 誤字脱字のチェック。
  3. 加工できるか否か、組み立てができるか否かのチェック。

 次に図1に示すように、「検図」を「機能検図」と「生産検図」の2つに分けると検図そのものの設計プロセスがよく理解できることを紹介しました。

図1●検図を機能検図と生産検図に分ける
図1●検図を機能検図と生産検図に分ける
(出所:國井技術士設計事務所)
[画像のクリックで拡大表示]

 ここで、重要なことは、図面1枚で、生産検図はどうにか実施できるかもしれませんが、機能検図については全くできないということです。従って、1枚の図面の存在は一体何なのかと考えたのが、図面レスを推進する3人の社員と、我々設計コンサルタントの4人でした。これが、完全図面レス改革への大きなきっかけになったのです。とても単純なきっかけです。