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【質問】

 前回(第58回)質問した技術系役員です。CAE(Computer Aided Engineering)やバーチャルリアリティー(VR)空間を利用したバーチャルデザインレビュー(VDR)、そしてバーチャルエンジニアリング(VE)には、かねて興味がありました。しかし当社は中小企業であり、完成した部品や組立体の3D-CADデータありきのVDRやVEの確立は不可能です。なぜなら、大企業から受注する部品や組立体は頻繁に設計変更されるからです。こうした場合でも、我々中小企業は文句が言えません。特に、自動車系の企業の自己都合による設計変更が大きな課題です。先生が中小企業に勧めているという「ダイレクトデザインレビュー」について教えてください。

【回答】

 最初に断っておきますが、私はVDRやVEがムダとも役に立たないとも言っていません。そこは誤解しないでください。むしろ、大企業には豊富な時間や経営リソースを使って理想的なVDRやVEを構築することを期待しています。これに対し、日本企業の99.6%を占めると言われる中小企業には、設計改革の1つとしてダイレクトデザインレビュー(以下、DDR)を勧めます。

 前回(第58回)はVDRやVEと比較しながらDDRの外側を解説しました。今回はその内側を解説します。

設計とは「仕込み8割、製図が2割」

 図1は、第58回でも掲載した商品開発のフローです。この図の上側は、設計書がない日本独特の「手抜きの設計フロー」です。ピンク色の「生産」の設計工程で、前述のVDR/VEを実行する設計プロセスは、「バックローディング開発」の代表格であり、まさに「宝の持ち腐れ」。それどころか私の事務所が推進する高速設計においては、「百害あって一利なし」とも言えます。

図1●手抜きの設計フローと正統派の設計フロー
図1●手抜きの設計フローと正統派の設計フロー
(出所:國井技術士設計事務所)
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 一方、下側は、世界では当たり前の設計書が存在する「正統派の設計フロー」です。設計書が存在する「正統派の設計フロー」で、緑色の「設計審査」の手前、ここで私の事務所が推進している「完全図面レスの次に来るDDR」の仕組みを構築して設計の超高速化を狙います。

 ここで、小見出し(設計とは「仕込み8割、製図が2割」)に注目してください。これについては本コラムの第27回で詳述しています。「8割」の部分が重要なのです。ぜひ、復習してみてください。

開発ステップから見るDDR

 図2は、大企業が利用する「コンカレント開発」のステップです。しかし、私の事務所では、中小企業に対してはこの開発ステップを厳重禁止にしています。その理由は中小企業には「百害あって一利なし」と思うからです。私の事務所の調査では、この開発ステップを成功させている日本企業は皆無です。なぜ、禁止しているかというと、図中の「同時進行部分」におけるバトンやたすきを有していないからです。それらがない分を、「あうんの呼吸」でつないでいます。この開発ステップで発生する代表的な不具合は社告・リコールです。

図2●私の事務所が禁止しているコンカレント開発
図2●私の事務所が禁止しているコンカレント開発
(出所:國井技術士設計事務所)
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 詳しくは、第25回を振り返ってみてください。