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【質問】

 第58回から立て続けに質問している技術系役員です。前回の第59回を読み、國井先生が唱える設計改革である「ダイレクトデザインレビュー(DDR)」の姿が少しずつ見えてきました。しかし、この設計改革には相当の設計力がないと難しいのではないでしょうか。そこで、DDRを実行するに当たって準備すべきアイテムを教えてください。

 この質問に対する私の回答はこうです。

【回答】

 ご指摘の通り、DDRの実行には設計者の設計力はもちろん、設計審査と指導ができる設計リーダーや設計マネージャーの存在が条件となります。DDRが9割を超える中小企業の設計改革にふさわしいといくら私が言っても、実力なき者や実力なき企業には実行は不可能です。第58回でも解説しましたが、例えば偏差値35の受験生が、気合だけで偏差値70の大学に合格することはできません。今回はDDRが実施するために必要な設計的素養と準備すべきアイテムを解説します。

 新型コロナウイルスへの感染拡大が不安な時期に、ある専門家の記事を読みました。「自称専門家からジャーナリスト、元政治家、経済学者、芸能タレントまでが専門家ぶって発言するようになった。一番困惑しているのは、我々専門家です」と。

 この現象は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が誕生してからではないでしょうか。SNSは自由発言の場をもたらした素晴らしいコミュニケーションツールだと思います。しかし、自由であるためには一定のルールを守らなければなりません。そのルール違反の事例が、いじめや言葉の暴力、デマの拡散といったものでしょう。

 設計にも同様のことがいえます。自称専門家や資格なき者、実績なき者が、設計実務から設計効率、設計改革まで我流のやり方を、絶対の法則でもあるかのように主張するケースが目に付きます。それを防ぐ手段が専門であり学問です。そこで、設計工学に基づく設計改革であると私が確信するDDRの実践に必要な素養と各種のアイテムを紹介しましょう。

技術コンピテンシーの向上が必須

 DDRの導入による設計改革は「ナンバーワン企業になろう」といった掛け声だけでは実現できません。しかるべき能力・実力が必要です。技術者において、学生時代の偏差値に相当するものに「技術コンピテンシー」があります。詳しくは、第19回を振り返ってみてください。そして、そこに記載されている技術コンピテンシーのテストを実施して、図1に示すような自分の技術コンピテンシー(≒偏差値)を求めてください。その結果を見て技術コンピテンシーが低いと自覚したり、判断したりした場合には修業や自己研鑽(けんさん)が必要です。

図1●技術マネジメントとコンピテンシー項目
図1●技術マネジメントとコンピテンシー項目
(出所:國井技術士設計事務所)
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DDRを構築するための各種アイテム

 DDRを実施するためには3つのアイテム(開発ツール)が必要です。第56回で解説した「完全図面レス」を構築するための必須アイテムと同じく、次の3つが必要となります。

  • [1]設計書:「簡易設計書(DQD)」
  • [2]FMEA:「シンプルFMEA(3D-FMEA)」
  • [3]試作

 ここでさらに[3]の試作を、第32回で解説した「超低コスト化手法(コストバランス法)」と入れ替えます。これら3つは私の事務所オリジナルの開発ツールとなります。以下、それぞれを説明しましょう。

[1]簡易設計書(DQD)

 まず、図2に示すDQD(簡易設計書)が必要です。設計書にはそもそも、技術者の「主要3科目」といえるQCD(品質、コスト、納期)が記載されています。従って、設計書を審査する設計プロセスを設計審査と呼びます。DQDは机上試作、つまり、設計書の中で実施する「試作-1」に相当します。これに対し、現物試作を「試作-2」と呼びます。このDQDはExcelで構築されており、設計項目を1項目ごとに審査するシステムとなっています。詳細については第29回で復習できます。DQDのExcel版は私の事務所のWebサイトから無料でダウンロードできます。

図2●簡易設計書(DQD)
図2●簡易設計書(DQD)
(出所:國井技術士設計事務所)
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